【住宅ローン】金利上昇する条件は変動と固定では全く異なる
【住宅ローン】金利上昇する条件は変動と固定では全く異なる
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FM76.7MHzフラワーラジオ にて毎週放送!
レギュラー番組:『不動産せんせい田中の教えて!不動産の知恵袋』
第469-1回目 (2023年8月31日放送分 前半)となります。
今回の話題
金利上昇する条件は変動と固定では全く異なる
今回のテーマ『住宅ローン変動金利/固定金利が決まる仕組み』
FM鴻巣フラワーラジオ
不動産せんせい田中の『教えて!不動産の知恵袋』
皆さま、こんにちは。
番組MCのフジコで御座います。
本日も宜しくお願いします!
早速ですが、田中せんせい。
本日は、どんなお話をいただけるのでしょうか?
本日は
- ・住宅ローンの変動金利が決まる仕組み
- ・住宅ローンの固定金利が決まる仕組み
本日も興味深いお話ですね。
ぜひ、お願いします。
質問『変動金利は上昇しないと言う根拠を知りたい』
それではフジコさん。
リスナーさまから質問を頂いているので、ご紹介お願いします。
承知しました。
ラジオネーム:マフィンさんからのご質問です。
固定金利は上昇しています。
変動金利も上昇するのではないでしょうか?
いつも勉強になりありがとうございます。
住宅ローン金利についての質問です。
以前の放送では「変動金利は、まだしばらくは上昇しない」とおっしゃっていましたが固定金利は、すでに上昇していますよね?
これって、次は、すぐに変動金利も上昇するのではないでしょうか?
どのようなロジックで変動金利は、しばらく上昇しないと言っているのですか?
これから住宅ローンを借りようと検討している私としては非常に心配です。
詳しく教えて頂けますか?
よろしくお願いします。
ラジオネーム:マフィンさんからのご質問
ラジオネーム:マフィンさん。
ご質問ありがとうございます。
ご質問いただいたように、
固定金利はずいぶん上昇していますが、変動金利は低位安定で、むしろ下がっています。
それは、どうしてですか?
それは、
『固定と変動では、金利が決まる仕組みが全く違う』
からなんです。
固定金利が決まる仕組み
まずは、固定金利が決まる仕組みから解説します。
住宅ローンの固定金利は、長期国債利回り、いわゆる10年以上の長期金利の影響を受けます。
長期金利の動向は、日銀の金融政策次第と言えます。
日銀は、金融緩和政策の一環でイールドカーブコントロールを実施しています。
「金融緩和」とは、金利を下げて経済のお金の動きをスムーズにする政策で、物価を上げたい時に有効と言われています。
逆に、金利を上げてお金の動きを悪くすることを「金融引き締め」といい、物価を下げたい時に行なう金融政策です。
なるほど。
米国は、物価が高くなり過ぎているので、今は金融引き締めをしていますよね。
その通りです。
日本は物価が高くなっていますが、日銀は金融緩和でお金の動きをスムーズにする政策をとっています。
日本も物価が高くなってきているのに、金融引き締めしないのですか?
日本は、まだ金融緩和から金融引き締めには政策転換できません。
日本の物価高は、コストプッシュ型のインフレと言います。
このインフレは、日本の国力低下により、エネルギーも含めた輸入品の原価が高騰していることが原因です。
そのため、まだ利上げできないのです。
以前モゲ澤先生もお話していましたよね。
そうです。
景気が良くないのに、物価だけが高くなったからと言って日銀が利上げしてしまったら、経済のお金の動きが悪くなります。
そうなると、日本はたちまち不景気になってしまいます。
そのため、現在、日銀は金融緩和政策を実施して、政策金利をマイナス0.1%に抑え込んでいます。
日銀が、政策金利を抑え込んでいるのに、なぜ長期金利は、上昇しているのですか?
それは、先程から言うように、短期金利(政策金利)と長期金利は、別物だからなのです。
短期金利は、日銀が金融政策決定会合で決めます。
しかし、長期金利は、ある程度市場の流動性に委ねています。
ただし、ボラティリティが大きすぎると経済が混乱するので、日銀は、イールドカーブコントロールを導入して、長期金利の変動幅に許容範囲を設けて金利操作をしています。
この許容範囲を超えると、日銀は、長期金利の金利上昇(債券価格の下落)を抑えるために、指値オペと言って、無制限で国債を買入れします。
昨年の長期金利の上昇は、この許容範囲の中で動いていました。
しかし、海外の長期金利が急上昇したことで、長期金利は、この許容範囲のアッパーまで上昇してしまいました。
そうなると、日銀は、常に無制限の指値オペを続けなければなりません。
そのため、昨年末の金融政策決定会合で、日銀は、YCCの許容範囲を0.25%から0.5%に変更しました。
そして、今年7月の金融政策決定会合では、さらに、この0.5%を1%に引上げました。
その結果として、この長期金利に連動する住宅ローン固定金利がひと段階上昇したということです。
なるほど。
つまり、固定金利の行方は、「日銀が長期金利の許容範囲を広げる。」
要するにYCCの変動幅の変更が大きく影響するということです。
一方、変動金利は、このYCCの影響は全く受けずに低金利が持続されています。
むしろ、逆に変動金利は、下がっています。
冒頭でもお話したように変動金利が決まる仕組みは、固定金利とは全く異なるということです。
変動金利が決まる仕組み
それでは、変動金利が決まる仕組みについて教えてください。
承知しました。
固定金利は、長期金利の影響を受けます。
一方、住宅ローンの変動金利は、短期金利の影響を受けます。
短期金利とは、企業が銀行から1年以内の短期間で借りる時の金利のことです。
例えば、不動産会社が、土地を仕入れて新築を建てるという分譲事業を行なう場合に銀行から融資を受ける場合は、この短期金利となります。
住宅ローン変動金利は、この短期金利の影響を受けます。
短期金利は、日銀が設定する政策金利の動きに影響します。
現在、日本の政策金利は、マイナス0.1%です。
ちなみに、アメリカの政策金利は、プラス5.25%~5.5%、イギリスは5.25%です。
全然違いますね。
そうですね。
ですが、政策金利は一概に海外と比べるものではなく、各国の経済状況や物価の動きなどを踏まえて、それぞれの中央銀行が独自に決めるものです。
そのため、政策金利を見れば、その国の物価や景気、金融政策の方針などをうかがい知れます。
なるほど。
住宅ローンの変動金利は、変わらず低位安定
ここまでのお話を少しまとめると・・・
日銀は、7月に行なった金融政策決定会合でYCCの上限を1%に引き上げました。
それに伴い、長期金利が、ひと段階上昇して、住宅ローン固定金利も上昇したと言うわけです。
一方、政策金利はマイナス0.1%を持続していますので、住宅ローンの変動金利は、変わらず低位安定しています。
裏を返すと、日銀が政策金利を利上げしたら、変動金利は上昇するということですよね。
日銀が、金融緩和から金融引き締めに政策を変更したら、変動金利も固定金利も急上昇するでしょうね。
それは怖いです。
これから、すぐに金融引き締めに政策変更することはあるのですか?
それはないと思います。
先日の日銀の植田総裁の会見でも、「引き続き金融緩和を続ける。」と明言しています。
すぐに利上げする可能性はないということですか?
そのとおりです。
また、日銀の植田総裁が考える利上げの判断基準からも、うかがい知れます。
日銀は『需要牽引型のインフレ』を目指しています。
『需要牽引型のインフレ』とはどのようなことですか?
ひと言でいうと、賃金上昇を起点とした物価上昇サイクルです。
賃金が上昇→需要増大→インフレのサイクルということです。
今は、コストプッシュ型のインフレだから。
ということですね。
そうです。
コストプッシュ型のインフレは、
海外資源高→輸入価格上昇→インフレ
です。
これでは、景気が良くなりません。
この状況で他国と足並みを揃えるようなかたちで、利上げしてしまったら、たちまち景気が悪くなってしまいます。
これは、円安によるコストプッシュ型のインフレよりも経済へのダメージが大きくなります。
そのため、日銀は、金融緩和から金融引き締めに政策変更することは出来ないと言えます。
もし、利上げするとしても、現在のマイナス0.1%を0%、プラス0.1%、0.2%と数年の時間をかけて、経済状況を見ながら金融緩和政策の範囲内で慎重に行なうことになります。
なるほど。
関連ニュースを解説(WallStreetJournal)
このことを踏まえて、フジコさん、ニュース記事のご紹介を、お願いします。
承知しました。
8月28日付のウォールストリートジャーナルの記事ですね・・・。
FRB利上げ終了か パウエル発言は選択肢残すがパウエルFRB議長は25日、米ワイオミング州で開催されたFRB主催の年次国際シンポジウム「ジャクソンホール会議」で講演し、追加利上げが必要になる可能性を示唆した。
ありがとうございます。
この記事の内容を見ると、日本の住宅ローン金利とは無縁に感じるかもしれませんが、間接的に関係する可能性があります。
今後FRBが利上げするとどうなるか?
ということです。
どうなるのですか?
FRBが利上げすると米国の長期金利が上昇します。
その結果、日米金利差が広がることになります。
日米金利差が広がると、投資家は、円を売ってドルを買ってドル建て債券に投資するようになります。
これにより、日本国債の需要減少を引き起こしてしまう可能性がありますので、日本の長期金利も上昇します。
そうなると、それを防ぐために、日銀は、YCCの上限キャップを引き上げることになります。
その結果、長期金利の影響を受ける住宅ローン固定金利も上昇するということになります。
金利や経済は、色々な影響を受けるので、絶対にこの通りになるとは言い切れません。
ですが、昨年あたりからは、このような動きになっています。
これは、あくまでも長期金利の動きですので、変動金利には影響していないという状況になります。
なるほど。
このような視点でニュース記事を読むのは面白いですね。
そうですね。
住宅ローン変動金利と固定金利が決まる仕組みがわかれば、これからの住宅ローン選びにも役に立つと思います。
まとめ
今日のお話の要点をまとめますと・・・
- ・固定金利は長期金利の影響を受ける。
- ・変動金利は、政策金利の影響を受ける。
- ・長期金利が上昇しても、政策金利が上昇しなければ、変動金利は全く影響を受けない。
- ・変動金利は、日銀が金融緩和から金融引き締めに金融政策を変更しなければ金利上昇はない。
今回の内容は、私の個人的な意見だけでなく、以前でモゲ澤(塩澤)先生がお話した内容と、SBI新生銀行の記事 などを参考に構成してみました。
出典:SBI新生銀行 – 住宅ローンの固定金利引き上げの理由を解説!
今回は以上になります。
日銀植田総裁の利上げの判断基準とは?
【住宅ローン】変動金利が上昇する可能性~日銀植田総裁の利上げの判断基準とは?~
田中先生、ありがとう御座いました。
不動産せんせい田中の教えて不動産の知恵袋。
次回も宜しくお願いします。
【住宅ローン】金利上昇する条件は変動と固定では全く異なる
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