【不動産】地震の揺れに強い立地の選び方
【不動産】地震の揺れに強い立地の選び方
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レギュラー番組:『不動産せんせい田中の教えて!不動産の知恵袋』
第486-1回目 (2024年1月18日放送分 前半)となります。
今回のテーマ『住んでも安全な立地・危険な立地』
今回は『住んでも安全な立地・危険な立地』というテーマでお話していきます。
まずはフジコさん。
今回のテーマに関連したご相談を頂いているので、ご紹介お願いします。
承知しました。
ラジオネーム:中川さん からのご相談です。
相談「どんなエリアを買えば安全か悩んでいます」
田中先生。こんにちは。
いつも勉強させて頂いております。
以前の放送で、震度7の地震がきても倒壊しない家についてお話していましたが、活断層の上では、どんなに頑丈な建物でも、ひとたまりもないと思うのですが、如何でしょうか?
これから住宅を買おうと検討していますが、どんなエリアを買えば安全か悩んでいます。
ご助言いただけないでしょうか?
宜しくお願いします。
ラジオネーム:中川さん からのご相談
ラジオネーム:中川さん ご相談ありがとう御座います。
建物が頑丈でも立地次第で限界がある
中川さんのおっしゃる通り、活断層の真上では、頑丈に建てていても、地盤そのものに隆起や陥没が起こってしまえば、ダメージは甚大になります。
どんなに建物を頑丈にしても、災害の可能性が高い立地では、リスクは高くなります。
相談では「どんなエリアを買えば安全か?」ということですが、田中先生、如何でしょう?
安全な立地に丈夫な住宅を建てる
安全な立地に丈夫な住宅を建てる
- ■丈夫な住宅
- ①ハザードマップなどで災害リスクが低いエリアを選定
- ②その地盤に適した地盤改良工事を実施
- ③頑丈な建物を建造
- ■限界のあるエリア
- ・豆腐のような柔らかい地盤
- ・津波の恐れがあるエリア
- ・ちょっとした雨でも床上浸水の恐れがあるエリア
そうすると、豊洲や晴海などの湾岸のタワマンなどは、どうなのでしょう?
災害には弱いと思います。
やっぱりそうですよね。
埋立地で海抜もほぼ0メートル地帯なので、津波 / 高潮 / 液状化 のリスクは高いです。
そのようが地盤は固いわけがありません。
首都直下型のような大地震がきたら、被害は甚大だと思います。
田中先生なら住まないですか?
以前2年ほど、晴海にあるタワマンを事務所として借りていましたが…
買ってまで住もうとは思えませんでした。
でも、湾岸エリアのタワーマンションって、人気があって売れていますよね。
何故なんですかね?
みんな好きなんですよ。
都心で利便性が良く地名のブランド力が高いですよね。
不動産の価格は、地名のブランド力に大きく影響します。
埋立地で、地震や水害などの災害に弱くても、人気があって利便性が良いから人が集中するということです。
東京の自然災害リスクは世界最大
画像引用:元千葉大学理学部地球科学科教授 – 東京の自然災害リスクは世界最大
東京の地震・津波・高潮・洪水などの自然災害リスクは世界最大という研究データも出ています。
それにもかかわらず、東京には人が集中し過ぎています。
■人口と災害リスクの関係
不動産価値と災害リスク
人が過密になればなるほど、災害リスクは高まります。
利便性が良くて、不動産としての価格が高いエリアは人の密集度が高くなるから、災害リスクも高くなります。
災害への強さを第一に検討するのであれば、湾岸エリアの埋め立て地はおすすめできません。
トラフや海溝が原因で発生する海溝型地震
それと、やはり、活断層は避けたいところですね。
画像引用:気象庁 – 地震発生のしくみ-日本周辺で地震の起こる場所
日本では、世界で起こっている地震の約1/10にあたる数の地震が発生しています。
この図は、1960年~2011年にかけて日本近辺で発生した地震の分布図です。
赤丸が大きければ大きいほど、地震の規模が大きいことを表します。
マグニチュード7以上の地震もかなり多いことがわかりますね。
日本周辺にあるプレートと海溝
画像引用:気象庁 – 地震発生のしくみ-日本周辺で地震の起こる場所
日本周辺では
- ・太平洋プレート
- ・フィリピン海プレート
- ・北米プレート
- ・ユーラシアプレート
大地震が発生するのは、「〇〇トラフ」や「〇〇海溝」と呼ばれる、プレートとプレートの境目に集中しています。
南海トラフとか千島海溝のことですね。
…そもそもトラフって、どんな意味なのでしょうね?
■トラフと海溝
トラフと海溝
トラフも海溝も、基本的には、海底にあり、プレート同士がぶつかって片方に沈み込むことで形成される地形のことで、地震の原因になる場所のことを言います。
海溝は6,000m以上の深さの溝で、トラフはそれより浅い溝のことを言います。
■地震のメカニズム
日本周辺では、海のプレートが沈み込むときに陸のプレートを地下へ引きずり込んでいきます。
陸のプレートが引きずりに耐えられなくなり、跳ね上げられるように起こるのがプレート境界の地震というものです。
このメカニズムについては、既にご存じの方は多いと思います。
これは、大地震のたびに報道されていますよね。
陸地の活断層が原因で発生する内陸型地震
画像引用:国土地理院 – 活断層とは何か?
日本では、トラフや海溝が原因で発生する海溝型地震だけでなく、陸地の活断層が原因で発生する内陸型地震があります。
国では、活断層のハザードマップというものを作成しているのですか?
はい。国土地理院のホームページ では、活断層図のマップを閲覧することができます。
ただし、まだ、全ての活断層を調べ切れているわけではありません。
そのため、ここは活断層でないから安心だと思って住宅を購入しても、将来、新しい活断層が発見される可能性が十分にあります。
日本で家を買うのであれば、やはり地震への備えは必要だと思います。
■活断層図では能登半島エリアは空白だった?
この活断層図では、能登半島エリアは空白ですね?
そうなんです。
そのため、未知の活断層が、これから発見されていく可能性は十分にあるので、それを避けて物件を選ぶということは難しいと言えます。
J-SHIS(ジェイシス)の使い方
そこで、J-SHIS(ジェイシス)という非常に興味深いホームページをご紹介します。
これは、地震ハザード評価だけでなく、地図上で場所を特定するだけで、誰でも無料で簡単に地震ハザードカルテを作成できます。
画像引用:国立研究開発法人 防災科学研究所- 地震ハザードステーション
使い方は、非常に簡単です。
J-SHISの地震ハザードカルテの地図で場所を選定して「診断する」ボタンを押すだけです。
そうすると、250mメッシュ(約250m四方)のデータを検索することができます。
今回は、例えば、東京都江東区豊洲のららぽーと付近を調べてみます。
ららぽーと周辺のハザードカルテを見てみる
ハザードカルテ ららぽーと周辺
右上には、メッシュ内の平均的な標高と夜間人口が表示されます。
- ・標高:1m
- ・夜間人口:550~600人
左下の表層地盤には
- ・地盤増幅率:1.84
- ・微地形区分:埋立地
- ・30m平均S波速度(浅部地盤):196m/S
結果の見方が難しそうですね・・・。
大丈夫です。
数値の見方を調べてきましたので説明します。
■数値の見方
- ■地盤増幅率:1.84
-
・地下を伝わってくる地震波が深さ30メートルの地盤で何倍に拡大(増幅)するかを示した数値です。
この数値が大きければ、揺れやすい軟弱な地盤と言えます。
- ■30m平均S波速度:196m/S
-
・S波が地中を伝わる速度のことを意味します。
一般的に、地盤が硬く密度が高いほど、S波の速度は速くなります。
例えば、岩石のような硬い地盤では、S波が早く伝わりますが、砂や粘土など柔らかい地盤では、速度が遅くなります。
従って、この数値が大きい方が硬い地盤、数値が小さいと柔らかい地盤であると判断できます。
上記から、このエリアは、ゆれやすさ全国上位5%に入るエリアと判定されています。
右側には、何年以内に発生するかという地震の確率が表示されています。
今後30年間に震度6強の揺れに見舞われる確率は19.3%など、地震に関する様々なデータを確認できます。
凄いですね。
こんな詳細な情報が簡単に見れるのですね。
でも、基準が分かり難いですよね。
東京都日野市駅前のハザードカルテと比較してみる
そうですよね。
そこで、比較するために、地盤が硬そうなエリアとして、東京都日野市の駅前をサンプルに調べてみましょう。
ハザードカルテ 東京都日野市周辺
- ・日野駅前の標高:100m
- ・メッシュ内人口:700~750
- ・地盤増幅率:1.14
- ・微地形区分:砂礫質台地
- ・30m平均S派速度:343m/S
- ・揺れやすさ:上位20%
- ・30年以内に震度6強の揺れに見舞われる確率:4.2%
■ハザードカルテから見る 揺れやすさ比較結果
ハザードカルテ 揺れやすさ比較結果
硬いということがわかりますね。
- ■地盤増幅率
- ・数値が大きい方が揺れやすい
- ・数値が小さい方が揺れにくい
- ■微地形区分
- ・埋立地より砂礫質台地の方が硬い
- ■30m平均S波速度
- ・数値が小さい方(速度が遅い方)が柔らかい地盤
- ・数値が大きい方(速度が速い方)が硬い地盤
物件選びをするときには、非常に参考になりますね。
実際には、日野市と豊洲を比較検討する人はいないと思いますが、今回は、比較のため、対照的なエリアをサンプルにしてみました。
地震は、いつ発生するかわかりません。
だけど、これから住もうと検討しているエリアが、地震で揺れやすいのどうかを数値で確認できると、物件選びの新たな判断基準になるかと思い、ご紹介しました。
先程も申し上げましたが、家造りは災害リスクが低いエリアを選ぶことが大切です。
しかし、利便性が良い、東京23区は、人が集中しやすく災害への脆弱度が高くなります。
通勤や家族の利便性を重視するか、防災を優先するかは、非常に悩ましいところで、30代、40代の子育て世帯で働き盛りになると、利便性を重視せざるを得ない人も少なくないと思います。
そのような人は、災害リスクが高いところに住むというのは、仕方ないのですか?
いずれにしても、完全に災害がないエリアを購入するのは難しいと思います。
そのような人は、耐震と保険でリスクをヘッジすることが大切です。
以前の番組でお話しましたが…
- ・昭和56年6月よりも前に建築確認を取得した旧耐震の物件
- ・ビルトインガレージのような1階に壁が少ない物件
耐震診断を実施して、地震に強いかどうかを数値的に確かめることが大切です。
そして、地震などの災害に遭われた場合、保険金で生活を再建できるように、火災保険と地震保険を十分にかけておくことが大切です。
まとめ
今回のお話のまとめとしましては、以下のようになります。
- ・利便性が良いエリアは人が集まりやすく災害への脆弱度が高くなる
- ・地震で揺れやすいか揺れにくいかは地震ハザードカルテで確認する
- ・利便性を重視するか、防災を優先するかは、家族で良く話し合って決める
- ・家を買うときには新築でも中古でも耐震診断をすることが大切
- ・火災保険と地震保険は、必要十分な金額で掛ける
なるほど。
それでは、今回のお話も、五・七・五の標語にまとめてきました。
震度7
湾岸エリア
実績なし
都心部のような密集したエリアで震度7の地震は、経験がないので、防災対策を怠らないようにという思いを込めて作ってみました。
なるほど!
田中先生ありがとうございました。
不動産せんせい田中の【教えて不動産の知恵袋】
後半もよろしくお願いします!
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