【不動産市場】マンション住民なりすまし問題 と どうなる?築50年後のマンション
~デベロッパーは50年後のことなんて考えていない~
今回のテーマ『マンション住民なりすまし!大規模修繕の受注誘導!』

FM鴻巣フラワーラジオ『不動産せんせい田中の教えて不動産の知恵袋』
この番組は「不動産の今がわかれば、ちょっと先の未来も見えてくる」をテーマに、毎週木曜日夕方4時から生放送でお送りしております。
早速ですが、今回は、どんなお話を頂けるのでしょうか?

今回のテーマは、
『マンション住民なりすまし!大規模修繕の受注誘導!』
興味深いニュースが飛び込んできましたので、この話題を取り上げます。
その後、
『どうなる?築50年後のマンション!』
として、マンションの現状を解説します。

この『マンション住民なりすまし』ニュースは非常に興味深いですね。
まずは、フジコさん。記事のご紹介をお願いします。

承知しました!
- 執筆者:田中 勲
(宅建士、ホームインスペクター、FP) - YouTube – 田中勲の『不動産の知恵袋』
- -田中勲│こんな建売住宅は買うな
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※記事はラジオ収録用の原稿を元に要約しております。そのためYouTube動画と内容が異なる部分がございます。
マンション住民なりすまし!大規模修繕の受注誘導!
マンション住民なりすまし事件!「あなた誰ですか??」
フジコ: 7月5日のテレ朝NEWSによりますと・・・
「あなた誰?」─会議に現れた見知らぬ住民
マンション大規模修繕…“住民なりすまし”業者が会議参加 「あなた誰?」直後に逃走![]()
マンションの大規模修繕工事を巡る前代未聞の事件についてです。 大規模修繕とは、外壁やバルコニー、屋上などマンションの共用部分の劣化をその都度直していくのではなく、住民同士が話し合いをして計画的にまとめて工事していくことを指します。 今年5月、ある首都圏のマンションで、住民同士が話し合っていたところ、2人の工事業者が住民になりすまして会議に潜り込んでいたことが発覚しました。 この会議の場で、「あなたは誰ですか?」と追及する実際のやり取りの音声を番組が独自に入手しました。
田中: フジコさん、ありがとうございます。
マンションは、一般的に12年周期で大規模修繕工事が行われます。
この費用は、マンションの規模によって異なります。100世帯くらいのマンションであれば、確実に1億円以上の費用がかかります。
今は物価も高騰していますし、大規模マンションになると、1回の大規模修繕で10億円にもなることがあります。
フジコ: 大きな工事ですね。
田中:
そうなんです。
大規模修繕工事を獲得することは、業者にとっても非常に重要かつ魅力的なビジネスチャンスでもあるのです。
中島: やはりそうなんですね。
田中:
はい。分譲マンションの大規模修繕工事は、業者からすれば1億円以上の受注額が見込める大きな工事です。
規模が大きなマンションになれば数億円単位になります。
しかし、住民の多くは専門家ではありませんので、殆どの場合コンサル会社の主導で発注までをコーディネートするという構造です。
フジコ: 数億円の工事をお任せという感じなんですね。
田中: そうなんです。
- ・コンサル会社にとっては、管理組合に入り込むこと。
- ・工事会社にとっては、コンサル会社を味方につけること。
これが、大規模修繕工事ビジネスの鍵となります。 今後、少子高齢化による人口減少で、住宅の新規着工件数は減少すると言われています。
しかし、大規模修繕工事ビジネスは、まだまだ成長分野と言われています。
中島: マンションが存在する限り、永遠に続きますからね。
田中:
そうなんです。
そのような背景から、今回のような『なりすまし事件』が起こってしまうんです。
それでは具体的に『なりすまし事件』で何が起きたのか?
会議でのやり取りと、どんな人物が潜り込んでいたのか?
詳しく見ていきましょう。
業者だった!? なりすましの事実が発覚
中島:
まず、田中先生。
今回の事件、具体的にはどんなことが起こったんでしょうか?
田中:
はい。
この事件は、今年の5月、ある首都圏の大規模マンションで発覚しました。
このマンションでは、大規模修繕工事のために有志の住民による修繕委員会が立ち上がっていて、去年の8月から定期的に会議が行われていたんです。
ところが、その会議に住民を装った、なりすまし業者が2名、潜り込んでいたのです。
フジコ:
どうやってそんなことが…?
まさか普通に入って来れないですよね?
田中:
本来は入れません。
修繕委員会というのは自由参加ではなく、管理組合の理事会の承認を得たうえで参加できる仕組みになっているんです。
ですが、この2人は実在する住民やその息子を名乗って会議に申し込み、承認を得ていたのです。
さらに驚きなのは、そのうち1人が一級建築士を名乗っていて、業者選定のための比較表や資料を自ら作成していたんです。
中島: まさに内部から誘導していたということですね…。その後どうなったんですか?
田中: 今年の5月、外部からの情報提供で「なりすましの疑いがある」と指摘が入り、修繕委員会で直接本人に問いただしたんです。
フジコ: ほーっ!
田中:
会議中に「あなたは、誰ですか?」と追及されると、1人は「保険証を取りに行く」と言って会議室を出て、そのまま逃走。
もう1人は、警察を呼ばれ、その場で現行犯逮捕されました。
逃げた男性も後に逮捕され、2人とも現在は処分保留で釈放されています。
フジコ:
なんだか、ドラマみたいな話ですね…。
でも、何で、そんなことができたんですか?
潜入経路─業者はどのようにして住民になりすましたのか
田中:
そうですよね。そこが気になりますよね。
その裏には、『名義貸し』があったんです。
ある住民が『飲食店の覆面 調査 アルバイト』として、チラシを見て応募したところ、実際は「マンションの修繕委員会を調査するバイトだ」と言われ、夫の名前を貸してしまった。
ということなんです。
住民は「ただ調査で入るだけで口出しはしない」と信じていたそうですが、実際は、なりすました業者が堂々と議論に参加し、主導していたというわけです。
この業者Xという大阪の会社ですが・・・その会社の元社員が代表を務めているコンサル会社が発注先に内定していたということなんです。
これはもう、意図的に誘導して受注を狙った構図と見られても仕方ないですね。
フジコ: で、住民たちはどうなったんですか?やり直し…?
■目的は受注誘導
田中:
そうなんです。
発注の内定は取り消され、議論はすべて振り出しに戻りました。1年かけて積み上げてきた、この委員会の努力がゼロになったんです。
関係者は「また一からやり直し」と話していました。このことで、大規模修繕工事の実施時期も遅れますので、管理組合としても迷惑な話です。
管理組合側は偽計業務妨害などで警察に告訴しており、正式に受理されました。
中島: 『偽計業務妨害』って、どんな罪になるんですか?
田中:
偽計業務妨害というのは、嘘の情報や工作によって業務を混乱させた場合に成立する犯罪です。刑罰としては、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科せられます。
ただし、委員会の中で『どんな発言や行動をしていたか』が重要で、そこが立件の分かれ目のようです。
フジコ:
つまり…バレなければ発注まで行っていた可能性もあるということですね?
大規模なタワマンだとお互いの顔も知らないことが多いから、容易になりすまし出来そうですね。
田中:
そうなんです。
そこで国交省は、標準管理規約を見直す検討会を既に始めていて、管理組合として大規模修繕委員会で本人確認の強化を促す注釈を9月にも加える方針を決めました。
中島: マンションって、買って終わりじゃないんですね…。
■マンションは管理運営も合わせて購入する
田中:
そうなんです。
だからマンションは管理を買うとも言われるように、管理運営が資産価値を大きく左右します。
今回の事件は、その管理体制を逆手にとった事例です。
マンションは全国で700万世帯。棟数にすると15万棟以上あると言われています。
そのため、これは氷山の一角であり、コンサル会社などに修繕積立金を食い物にされているマンションというのも、少なくないでしょう。
中島: やはりマンションの大規模修繕工事は大手に頼んだ方がいんですか?
田中: それが、そうでもないんですよ。
どうなる?築50年後のマンション!
【不動産市場】出口戦略ないマンション!修繕積立金が狙われている!
田中:
それでは、
『どうなる?築50年後のマンション!大規模修繕は大手でも安心できない!談合と癒着は無くならない』
ということで、
2025年、公正取引委員会による立ち入り調査により明るみになった、大規模修繕工事大手の談合と癒着の実態について、お話していきます。
中島: なんだか、それもヤバそうな話題ですね。
不正の温床?設計監理方式が抱える構造的なリスク
田中:
『公正取引委員会は、大規模修繕工事の大手業者、約30社を独占禁止法の疑いで立ち入り検査を行なった』という報道がされました。いわゆる談合です。
まずは、フジコさん、こちらのニュース記事を紹介していただけますか?
フジコ: 承知しました。
拡大する修繕工事市場 工事知らぬ住民、費用は億円単位 不正も横行![]()
首都圏のマンションの大規模修繕委員会に男2人が住民になりすまして参加し、住居侵入容疑で神奈川県警に逮捕された。2人は大阪府東大阪市の大規模修繕工事施工会社の従業員で、「会社の利益のためになるとも思った」と供述したという。 マンションの大規模修繕工事は、住民らでつくる管理組合が発注する。住民らは必ずしも工事に詳しくない一方で、工事費は高額だ。住民間の関係の薄さや組合運営への無関心などに業者がつけ込み、不正を働くことがあるとして、国土交通省が注意喚起し、公正取引委員会は業界を調査している。
田中: フジコさん、ありがとうございます。
この記事から読み取れるように、マンションの大規模修繕工事には数億円もの費用がかかります。特に大規模なマンションでは、修繕費が10億円を超えるケースもあります。
しかしながら、こうした莫大な費用に関する意思決定は、建築に関する専門的な知識を持たない一般の住民によって行われ、発注されているのが現状です。
そこで、多くの管理組合では大規模修繕委員会を立ち上げて、時間をかけて検討します。
しかし、自分たちだけでは判断できないので専門のコンサルを利用します。
コンサル会社は設計と工事管理を担当して、複数の施工会社から相見積もりをとります。
そうすることにより、管理組合は比較検討できるようになります。
これを『設計監理方式』と呼びます。
中島: 相見積もりとって、マンション住民が比較検討できるというのは良いことじゃないんですか?
田中:
そうですよね。一見すると、公平で合理的な方式にみえますよね。
ところが、この仕組みが不正の温床になっているんです。
中島: そうなんですか!どんな不正があるんですか?
田中:
例えば、コンサル会社にキックバックを支払う施工会社が選ばれるように、管理会社には見えない形で誘導を行なう。
具体的には、管理会社へ候補として紹介した施工会社5社のうち、特定の1社だけに有利な情報を伝えて、あらかじめ内定させておく。
という感じです。
フジコ: コンサルと施工会社の癒着ですね。
田中:
そういうことです。
国交省は、2017年から、このことについて注意喚起していました。
しかし、こうした事例は、表向きいは相見積もりをとって管理組合に比較検討をさせているので、外部からは不正が見抜きにくいというのが現状です。
中島: 確かに分かりにくそうですね。
修繕積立金が狙われる!談合で上積みされる工事費
田中:
分かりにくいですよね。
そこで、今年の3月以降、公正取引委員会は、施工業者など大凡30社に対して、見積り合わせや入札談合の疑いで立ち入り調査を行なっています。
中島: 具体的な会社名は公表されているんですか?
田中:
公表されています。
報道によると・・・
- ・長谷工の関連会社の長谷工リフォーム
- ・シミズ・ビルライフケア(清水建設の関連会社)
- ・大京グループの大京穴吹建設
- ・三井住友建設グループのSMCR
など、大手企業などにも公取の調査が入っています。
■立ち入り調査のあった会社
会社名 | |
---|---|
公安委が立ち入り検査した主な建設会社 | 建設塗装工業 (東京・千代田区) |
三和建設 (東京都西東京市) | |
シンヨー (川崎市) | |
大和 (横浜市) | |
ティーエスケー (千葉市) | |
中村塗装店 (東京・品川) | |
ニーズワン (東京・渋谷) | |
日装・ツツミワークス (東京・豊島) | |
ニットクメンテ (東京・北) | |
長谷工リフォーム (東京・港) | |
富士防 (神奈川県横須賀市) | |
リノ・ハピア (東京・太田) | |
YKK AP ラクシー (千葉県松戸市) | |
建装工業 (東京・港) | |
シミズ・ビルライフケア (東京・中央) | |
SMCR (東京・中央) | |
大京穴吹建設 (高松市) | |
公取委が資料提供を求めた設計コンサルタント会社 | 翔設計 (東京・渋谷) |
中島: 結構な大手企業ですね。
フジコ: 複数の施工会社に見積もりをとるけど、競争しているフリで、形だけの相見積もりなんですね。
田中:
そういうことです。
例えば、候補となる施工業者が5社あったとしても、設計コンサル会社や管理会社が中心となって
「今回はA社に受注させる」
と最初から決めて、グループで結託して順番に受注するのが実態です。
このように、コンサルを中心に施工会社同士が、事前に見積もり価格を調整し合うことにより、管理組合は2割ほど高い工事費を支払っているとも言われています。
中島: 修繕積立金を食い物にされていますね。
■国民の1割以上がマンションに住んでいる
田中:
そうですね。
こうした談合や癒着の問題の背景には、マンションという住まいの構造的な限界が横たわっています。
現在、全国には700万戸以上の分譲マンション、16万棟以上の建物が存在しています。これは国民の1割以上が住んでいる主要な居住形態になっています。
中島: そんなに多くの人がマンションに住んでいるんですね。
再生か延命か?築50年マンションの出口なき現実
田中: そうなんですが、マンションという仕組みには出口戦略が存在しないという大きな問題があります。
戸建て住宅であれば、所有者が自由に解体/売却できますが、マンションでは解体/建替えには5分の4(80%)以上の合意が必要です。
住民の高齢化 / 居住者の多様化 / 所有者不明住戸の増加 などにより、合意形成は年々困難になっています。
そうした中、国は2026年に区分所有法を改正し、耐震性不足など一定の条件を満たせば、建替え決議の要件を4分の3(75%)に引き下げるという方針を打ち出しました。
また、建ぺい率や容積率、高さ制限なども、特定行政庁の許可により緩和される可能性があるとしています。
中島: それなら、少し建替えしやすくなりますね。
田中:
この改正により「再生しやすいマンション制度をつくる」という意図は理解できます。
しかし私は、これが真の再生なのか?延命処置にすぎないのか?強い疑問を抱いています。
中島: 実際にマンションの建替え事例というのは、どのくらいあるんですか?
■マンションの建替え事例数
田中:
良い質問です!
先程も申し上げましたが、国内には 700万世帯、16万棟以上のマンションがあります。
そのうち、築40年経過したマンションは、137万世帯。棟数でいうと、約3万棟以上と推定されています。
その中で、実際に建替えを実現できたのは約300棟です。
フジコ:
築40年経過したマンションの1%しか建替えが実現できていないということなんですね。
どうして、ここまで少ないんでしょうか?
田中:
マンションを建て替えるのは非常にハードルが高いんです。
仮に5分の4以上の合意形成が得られたとしても、建替えに必要な資金(原資)を調達できないケースが多いのが実情なんです。
建替えを検討する多くのマンションでは・・・
- ・建替え後に住戸数を増やし
- ・その増えた分を外部に分譲して
- ・その売上を建替え費用に充てて
- ・住民の負担を極力抑える
という手法がとられています。
中島: なるほど。
■各社が巨大な修繕積立金の山に群がっている現状
田中:
しかし、すでに 建ぺい率/容積率 を上限ギリギリで使い切っているマンションでは、住戸数を増やすことができないのです。
また、建ぺい率/容積率に余裕があったとしても、住宅需要が低いエリアのマンションでは、住戸数を増やしても、建替え費用を捻出できるような売上を想定できず、既存の住民に大きな負担を強いる計画となり、結果として、建替え計画が頓挫するというケースも少なくありません。
そのため、築40年以上が経過した全国約3万棟のマンションの中で、実際に建替えを実現したのは約300棟で、わずか1%程度にすぎない結果となっています。
デベロッパーは、高度経済成長期から、これでずっと、マンションを『人間を効率的に収容するための空間ビジネス』として開発/販売してきたにもかかわらず、その50年後~100年後の出口戦略が全くないまま、現在に至っています。
高度経済成長期に量産された大規模マンションは、既に、老朽化/住民高齢化/管理不全 という三重苦に直面しています。
一方で、現在新規に分譲されているマンションでも、住民と共に高齢化していく50年後について、デベロッパーも不動産会社もユーザー自身も、その現実から目を背けたまま、建てて、売って、そして買っている・・・。
それが、いま私たちが直面しているマンションの姿なのかもしれません。
その隙間に、今や1兆円規模にまで拡大する大規模修繕工事の市場ができあがり、各社が『巨大な修繕積立金の山』に群がる構図ができているというわけなんです。

なるほど。
今回も勉強になりました。
田中先生ありがとうございました。

ありがとうございました!

田中先生、中島さん。
本日もありがとうございました。
不動産の今がわかれば、ちょっと先の未来も見えてくる『不動産せんせい田中の教えて不動産の知恵袋』
次回もお楽しみ!
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