【建売住宅】郊外が失速|飯田グループのビジネスモデルいつまで続くか?
今回のテーマ『10年後、郊外では建売住宅がなくなる!?』
【建売住宅】郊外が失速|飯田グループのビジネスモデルいつまで続くか?
郊外の建売住宅はなくなる!?——
10年後、郊外の建売住宅はどうなっていると思いますか?
将来、人口減少や建築費高騰の影響で、郊外では建売住宅のビジネスモデルが成り立たなくなる可能性があると言われています。
そこで今回は、建売住宅市場を取り巻く環境について深掘り解説していきます。
早速ですが、今回のテーマは、
『10年後、郊外では建売住宅がなくなる!?』
建売住宅がなくなるって、ちょっとショッキングですよね。
だって街を見渡せば、今もどんどん建っているじゃないですか?
そうなんです。現時点では建売ラッシュですよね。だけど、その背景には大きな矛盾があるんです。
- 執筆者:田中 勲
(宅建士、ホームインスペクター、FP) - YouTube – 田中勲の『不動産の知恵袋』
- -田中勲│こんな建売住宅は買うな
- Instagram – ゼロシステムズ|田中勲
- 専門家プロファイルを見る
※記事はラジオ収録用の原稿を元に要約しております。そのためYouTube動画と内容が異なる部分がございます。
建築費高騰がもたらす影響
世帯数ピークと住宅需要の減退
■世帯数ピークが住宅市場に与える影響
田中: 令和6年に公表された、国立社会保障・人口問題研究所のデータによると、2030年前後に日本全体の世帯数がピークを迎えると予測されているんです。
中島: 世帯数がピークを過ぎると、家を買う人が減っていく…ということですね。
田中:
その通りです。
当然、買う人が少なくなれば、新築の建売住宅だけでなく、中古物件やマンションも含めて、住宅需要全般が低迷することとなります。
そんな中、現在は建築費は物価高騰で上がり続けています。
需要は減るのに、供給コストは上がっています。
このままでは、大量供給で低コストを実現していた建売住宅というビジネスモデルは、市場規模とともに利益率が縮小、あるいは変化を強いられる可能性が高いということです。
この結果、今から10年後、郊外では建売住宅のビジネスモデルが成り立たなくなるエリアが増えるということです。
建築費指数と物価上昇
■建築費の上昇率と物価との関係
出典:建設物価調査会
田中: 2025年9月10日に公表された直近の建築費指数では、木造住宅は前年同月比+3.4%、鉄筋コンクリート造は前年同月比+5.1%となっています。
出典:総務省統計局
中島: 総務省が公表している消費者物価指数も、前年同月比+3.1%~3.4%なので、新築一戸建ての建築費も完全にリンクして値上がりしていますね。
出典:建設物価調査会
田中:
おっしゃる通りです。
建築費指数は2015年を基準とすると、2025年8月は木造・鉄筋コンクリートともに140%前後。
要するに、建築費は1.4倍になったということです。
建売住宅価格の上昇と消費者負担
■建築費高騰が販売価格と家計に与える影響
中島: 1.4倍って、すごい値上がりですよね。
田中:
そうですね。
以前は建売住宅の建築原価は1,500万円くらいでしたが、今では原価でも2,000万円を切ることはできません。
ローコスト注文住宅も以前は2,000万円ちょっとでしたが、今では3,000万円前後かかります。
中島: そんなに値上がりしているんですね。
大手ハウスメーカーの注文住宅は5000万円超えが標準に! ツーバイフォーの主流化で今後さらに高額化するか![]()
大手ハウスメーカーの注文住宅の建築費は5000万円超えが当たり前になってきた。さらに、プレハブ住宅よりも単価の高いツーバイフォー工法の住宅が主流になりつつある。
消費者の間でもハイスペックな住宅であれば高くても仕方がないという考え方が定着しているだけに、注文住宅価格はますます高くなっていきそうだ。(住宅ジャーナリスト・山下和之)出典:ダイヤモンド不動産研究所
田中: 積水ハウスやヘーベルハウスなどの注文住宅も、昔は3,500万円くらいで建てられましたが、今では5,000万円を超えています。 新築一戸建ても高級品になりつつあります。
注文住宅・マンションとの比較
■建売住宅と他住宅タイプの価格差の変化
中島: 建売住宅は「安い」という印象でしたが、最近は郊外でも値上がりしていますよね。
出典:レインズ
田中:
その通りです。
埼玉県内の新築一戸建て市況データを見ても、販売数は減少しているのに価格は上昇しています。
画像引用: – モゲチェック塩澤|住宅ローンアナリスト
田中:
さらに国交省が発表したデータを基に、モゲ澤先生(塩澤崇 氏)が作成した地価分析でも、東京・神奈川・埼玉・千葉の多くのエリアで地価が上昇または横ばいです。
つまり建築費の値上がりが価格に転嫁され、建売住宅も「薄利多売で安い」という時代ではなくなっています。
- ・建築費指数は2015年比で約1.4倍に上昇。
- ・建売住宅の原価は2,000万円超、注文住宅は3,000万円以上が当たり前に。
- ・大手注文住宅は5,000万円超で「高級品」化。
- ・建売住宅も値上がりし、従来の「安い」という印象が薄れている。
- ・地価や建築費の上昇により、郊外でも新築住宅が高額化している。
郊外の建売住宅ビジネスモデルの行方
都心50キロ圏内
価格競争と供給の限界
■郊外での価格転嫁の限界
中島: 高すぎると買えないですよ・・・。
田中:
そうですよね。そのためパワービルダーは、価格競争が起きないように、同じ郊外と呼ばれるエリアであっても需要が高いエリアに絞って土地を仕入れるようになりました。
しかし、それでも今後、建築費高騰分を物件価格に転嫁するというのは限界があります。
中島: ということは、郊外では新築の建売住宅がなくなるということですか?
田中: はい。今すぐではないですが、今後5年~10年のスパンで考えると、新築一戸建ては高所得層しか買えない高級品になり、郊外では建売住宅というビジネスモデルが成り立たなくなることが予測されています。
新築マンション市場との類似点
■都心集中と郊外空白の構造
中島: このことは、すでに新築マンションのマーケットで現実になっているんですか?
田中:
はい。今、都心では新築マンションが高級化していて、平均価格が1億円以上と言われています。
一方で、郊外には新築マンションがほとんど存在していません。
これは建築費の比率が高いため、価格が割高になり、マーケットがついてこないからです。
新築マンション 土地と建築費の内訳
中島: 確かに、郊外で高額な新築マンションを買うなら、一戸建てを選びたくなりますね。
田中:
その通りです。
逆に都心部では価格がもともと高額なので、建築費が上乗せされても吸収されてしまいます。
結果として、新築マンションは都心や地方都市の一部に限定され、財閥系の大手デベロッパーだけが分譲できる状況になっています。
高所得層向け高級化の進展
■新築は高所得層へシフト
中島: 都心部だと数億円の超高級マンションばかりですよね。
田中:
それでも売れています。
もはや新築マンションは高所得層や富裕層にしか買えない存在です。
庶民層は中古マンションを購入するマーケットが確立しています。
新築一戸建て市場も、今後は同じ流れになると予想できます。
つまり新築は高所得層向けにシフトし、従来の建売住宅はビジネスモデルとして縮小せざるを得ないのです。
- ・パワービルダーは需要の高いエリアに集中し、供給の幅を狭めている。
- ・建築費高騰を価格に転嫁するのは限界に近い。
- ・新築マンション市場はすでに高級化・都心集中が進んでいる。
- ・新築一戸建ても今後は高所得層向けへシフトし、郊外での従来モデルは縮小へ。
- ・庶民層は中古住宅へ流れる構造に変化していく可能性が高い。
『郊外』についての記事はこちらです↓
【不動産市場】2026年秋!売れ残る郊外!そもそも..どこからどこまでが郊外なのか?売れない土地の見極め方を解説!
今後の建売住宅の生き残り方
平屋・コンパクト住宅へのシフト
■1LDK~2LDK 平屋が主流に
中島: 10年後、郊外の一戸建て市場はどんな物件が生き残っていると思いますか?
田中:
2030年をピークに世帯数は減少し、さらに1世帯あたりの人数も減っています。
10年後は、独り暮らしや2人暮らしに向いた1LDK~2LDKのコンパクト住宅が主流になると考えています。
老後を考えると平屋が生活しやすく、今後は平屋の建売が増えるでしょう。
中島: なるほど~。夫婦2人なら1LDK~2LDKで十分ですし、老後を考えると平屋は理想ですね。
田中:
そうなんです。4LDKの平屋だと基礎や屋根の施工面積が大きくなり割高ですが、1LDK~2LDKの平屋なら建築費も抑えられます。
もし10年後に郊外で建売住宅が生き残っているとすれば、コンパクトな平屋が主流になっているでしょう。
人口減少と二極化する郊外エリア
■利便性で分かれる郊外の将来
都市計画-資産性と利便性
中島: だけど、人口減少で郊外は住宅需要自体が減って行きますよね。
田中:
そう思います。
ただし人口減少は全国一律ではありません。
利便性が高く人口集中が進む郊外もあれば、過疎化が進む郊外もあります。
この二極化は今後さらに顕著になります。
中島: なるほど~。郊外で一戸建てを買うなら、エリア選びがますます重要ですね。
- ・企画次第で郊外でも建売住宅は生き残れる可能性がある。
- ・将来は1LDK~2LDKのコンパクト住宅や平屋が主流になると予測。
- ・人口減少によって郊外は二極化し、利便性の高いエリアは需要が維持される。
10年後でも価値が下がり難い郊外エリアの見極め方↓
【2025年!建売不況到来】10年後でも価値が下がり難い郊外の一戸建てエリアの見極め方!
郊外で価値あるエリアの見極め方
都市機能誘導区域・居住誘導区域
■インフラ維持を見据えた区域選択
田中:
この表は、都市計画を資産性や利便性が高い順で分類したものです。
都市機能誘導区域や居住誘導区域であれば、人口を集中させて将来も公共インフラが維持されやすい。
同じ郊外でも資産性の下落がしにくいエリアの目安になります。
中島: なるほど~。郊外で一戸建てを買うなら、都市機能誘導区域や居住誘導区域が狙い目ということですね。
大型商業施設・チェーン店の存在が示す将来性
■出店実績を指標にした見極め
中島: 他に、郊外でも価値あるエリアを簡単に判断する方法ってありますか?
田中:
そうですね…。ショッピングモールや大型スーパー、チェーン店が出店しているエリアを選ぶと良いです。
代表的なのはイオンモールですね。
中島: 確かにイオンがあれば、郊外でもすごく便利になりますよね。
田中:
そうです。他にもベルクやベイシアのような大型スーパー、スタバやコメダ珈琲といったカフェが出店しているエリアはおすすめです。
これらのチェーン店は出店前に綿密な市場調査をしており、将来性を裏付ける根拠になっています。
中島: つまり、大手チェーンが出店していること自体が、その街の将来性の裏付けになるわけですね。
- ・都市機能誘導区域・居住誘導区域は資産性が維持されやすい。
- ・大型商業施設やチェーン店の存在は将来性の指標となる。
- ・出店調査の裏付けがあるため、個人の判断より信頼性が高い。
『どんな街で、どんな家を選ぶか』が重要になる
今回のまとめとしては・・・
10年後の郊外では土地の資産性の二極化と建築費の高騰により、現在のような建売住宅のビジネスモデルは成り立たなくなる可能性があります。
建売住宅は今の形では残れず、進化や変質を余儀なくされると思います。
ですが、これは建売住宅が完全に無くなるのではなく、形を変えながら生き残るということです。
これからは『どんな街で』『どんな家を選ぶか』が重要になってきます。
今回も勉強になりました。
田中先生ありがとうございました。
ありがとうございました!
- ・建売住宅の従来型ビジネスモデルは成立しにくくなる。
- ・完全に無くなるのではなく、形を変えながら生き残る可能性が高い。
- ・『どの街で』『どんな家を選ぶか』が、これからの最重要テーマ。
SNSからも質問を受け付けております
住宅ローンお役立ちツール
以下のツールを使うことで、住宅ローン審査や金利の計算などが簡単にシミュレートできます。
- 住宅ローン比較サイト『モゲチェック』(外部サイト)
- ・新規の借り入れで比較
- ・借り換えで比較
