飯田グループホールディングスのロシア木材企業買収が経済制裁の影響を受けて暗雲
飯田グループホールディングスがロシア木材企業買収したが地政学リスクで暗雲
~新築一戸建の価格が高騰する恐れ~
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今回の話題
飯田グループホールディングスがロシア木材企業買収したが地政学リスクで暗雲
~新築一戸建の価格が高騰する恐れ~
以下は、動画の内容に関連した情報です。
より詳しく知りたい方は、是非動画をご覧ください。
質問:飯田グループホールディングスがロシアの木材企業を買収した影響は?
YouTubeコメント欄からの質問
YouTubeチャンネルのコメント欄に頂いた質問に回答していきます。
今年1月に飯田グループホールディングスがロシアの木材企業を買収したみたいですが、今後どのような影響が出ると思いますか?
木材が入ってこないとか考えられますか?
この話題が何処も取り上げてないので専門家としての意見を教えて下さい。
あっきー さん からの質問
あっきーさん、ご質問ありがとう御座います。
400万ヘクタールという広大な森林の伐採権を獲得
飯田グループホールディングスがロシア最大級の林産企業を買収したニュースは、以下のように報道されています。
飯田グループホールディングス、ロシア最大級の林業グループRussia Forest Productsを子会社化飯田グループホールディングスは8日、ロシア最大級の林産企業を傘下に置く持ち株会社のRussia Forest Products(BVI)Limited(RFP、英領バージン諸島。売上高231億円、営業利益9億6200万円、純資産△178億円)の株式75%を取得し、子会社化すると発表した。
飯田グループは戸建分譲で約3割の国内販売シェアを持つ業界大手で、年間4万6000戸以上を供給する。
RFPはロシア極東のハバロフスク地方に約400万ヘクタール(九州の約1.08倍)の林区を持つ。
年間原木伐採量は170万立方メートルで、これは飯田グループが年間に供給する住宅の木材使用量(原木換算)に相当するという。(中略)
木材をめぐっては今年、世界的な需要の高まりを背景に「ウッドショック」と呼ばれる価格急騰が起こり、輸入材に頼る住宅業界は深刻な打撃を受けている。
飯田グループはRFPを傘下に迎えることで、需給ひっ迫や市況変動に影響されることなく、安定的で永続的な木材の調達が可能になると判断した。
また、木材加工ノウハウを移転し、建材事業の高付加価値化も期待している。
木材企業の買収で得られるメリット
世界的に住宅の建築需要が増えて木材価格が高騰
ウッドショックの状況が継続
現在、世界的に住宅の建築需要が増えて、木材価格が高騰しています。
経済産業省のデータによると、木材の輸入価格は、この1年で2.4倍に高騰しており、当面は、ウッドショックの状況が継続する蓋然性(がいぜんせい)が高いとされています。
要するに
『今後もウッドショックが続くから、まだまだ建築費は安くならない。』
ということです。
出典:経済産業省 – いつまで続くウッドショック;価格の高止まりが需要に影響?
自社で手掛ける住宅向けに安定供給を狙う
価格高騰だけでなく、木材などの建築資材が、予定通り入ってこないので、工期が大幅に遅れているという物件も珍しくありません。
従って、各ハウスメーカーでは、木材など建築資材の確保が重要になっています。
飯田グループホールディングスは木材企業の買収でウッドショックに対応
今から約3か月前の2021年12月8日付の日本経済新聞の記事では、
『飯田グループホールディングス、ロシアの木材企業600億円で買収 加工販売も』というタイトルのニュース記事がありました。
出典:日本経済新聞 – 飯田GHD、ロシアの木材企業600億円で買収 加工販売も
広さ400万ヘクタールの森林を獲得
飯田グループはロシア極東にある『ハバロフスク』で、400万ヘクタールという広大な森林の伐採権を獲得しました。
実際は、この企業買収交渉には、2年も時間がかかったとのことです。
関東よりも広い、九州の約1.08倍の面積
関東地方の1都5県の合計面積は、約324万ヘクタールなので、関東地方よりもはるかに広い面積(九州の約1.08倍)の森林となります。
極東ロシアの『ハバロフスク』は、北海道のすぐ上にある樺太の西側にあり、地理的に日本と近い位置となっています。
輸送に掛かる時間を短縮
ヨーロッパから木材を輸入する場合、船便で約2カ月、北米からなら約2~3週間くらいかかりました。
昨今ではコンテナ不足で、もっと時間がかかっています。
一方、極東ロシアからなら、船便でも2~3日で日本に輸入できるようになります。
買収する事による主なメリット
- ・自社で手掛ける住宅向けに、木材を短期間で安定供給できる。
- ・加工販売業に参入し、新たな販売新たな企業収益の柱にする。
- ・広大な森林を保持できるので環境への貢献につながる。
地政学リスクの問題が急浮上
ロシアへの経済制裁について関心が高まる
Googleの検索結果からも推測できます
最近、
『飯田グループホールディングス』とググると、後ろに『ロシア』と表示されます。
皆さん、ウクライナ侵攻によるロシアの経済制裁について、関心があるのでしょう。
ロシアへの経済制裁による影響
良いことばかりの買収でしたが、ウクライナ侵攻による、ロシアへの経済制裁という地政学リスクの問題が急浮上してきました。
今回の経済制裁では、ロシアの銀行を『SWIFT』から締め出す措置が盛り込まれています。
SWIFTとは外国にお金を送る時に使う通信方法の一つ
SWIFTとは、ベルギーに本部を置く国際銀行間通信協会で、外国へ送金をするための世界的な決済ネットワークの一つです。
世界の1万1000以上の金融機関が利用し、決済額は1日あたり5兆ドル、日本円でおよそ575兆円にのぼります。
SWIFTから締め出されて、それを利用できなくなると、ロシア国内にある企業は、輸出入しても、代金の支払いが困難になります。
SWIFT締め出しは最も厳しい経済制裁の一つ
SWIFTが利用できなくなると言うことは、貿易が出来なくなると言うことです。
これは、最も厳しい経済制裁の一つでもあります。
SWIFT(国際銀行間通信協会)国際銀行間通信協会(英語: Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication、略称: SWIFT)は、銀行間の国際金融取引を仲介するベルギーの協同組合。
日本語では、アルファベットの頭文字「SWIFT」をカナ文字転写してスイフト(スウィフト)と呼ぶほか、国際銀行間金融通信協会もしくは、国際銀行間通信協会という。
この組織によって提供される決済ネットワークシステムも「SWIFT」と呼ばれる。
グローバル企業のロシア離れが加速
ロシアの銀行が『SWIFT』から締め出されることで困るのが、ロシア国内で事業をしている外国企業です。
現在、多くのグローバル企業は、歩調を合わせて、ロシア離れが加速しています。
ロシア国内にある企業は、輸出入しても、代金の支払いが困難になります。
代金が回収できないので、ロシアで商売する意味がありません。
そのため、多くのグローバル企業は、ロシアでの営業を停止したり撤退している状況です。
飯田グループが受ける影響
撤退した企業の資産を国有化するとの声明
プーチン大統領は、
「外国企業がロシアから撤退した場合、その企業の資産は国有化する。」
と、強硬な姿勢をとってきました。
木材を輸入できない状況になってしまう
飯田グループは、今回600億円もかけて、森林の伐採権ごと企業買収したのに、経済制裁でSWIFTが使えないため、木材を輸入できない状況となってしまいました。
600億円もかけてロシア企業を買収したのですから、撤退という選択肢はさすがに無いでしょう。
しかし現状では、ロシアから木材を輸入する事が出来ない状況です。
ロシアが戦争をやめないと日本の新築価格は高騰してしまう
ウクライナへのロシアの軍事侵攻は、私たちの住宅購入とは無関係に思えます。
しかし、地政学リスクとして考えると、新築一戸建ての価格高騰や住宅ローン変動金利への影響など色々関係しているのです。