建売住宅の見極め方
~ 高い物件と安い物件の違い / 分譲会社で異なる品質の差
建売住宅の見極め方
価格が高い物件と安い物件の違い / 分譲会社で異なる品質とグレードの差とは?
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建売住宅とは
土地と建物がセットの新築分譲住宅
建売住宅とは、土地と建物をセットで販売している新築分譲住宅のことをいいます。
1950年代から続く販売形態
現代の建売住宅は、居住空間の広さや品質こそ高上していますが、1950年の建築基準法制定から、昭和の高度成長期や平成のバブル経済を経て、現在に至るまで、不動産業者が土地を仕入れて、その上に建物を新築して販売するという基本的なビジネスモデルは何ら変化していません。
建売住宅の種類と特徴
更地(完成前)の状態でも『建売住宅』と呼ばれることがあります。
建売住宅の現地見学に行くと、「更地」「建築中」「完成済」など、さまざまな状態があります。
多くの人は、「建売住宅」と聞くと完成済みの状態を想像すると思いますが、不動産業界では、土地だけの状態であっても「建売住宅」という場合があります。
ここでは、建売住宅の販売形態について説明します。
建売住宅の販売形態は、大きく分けて3つに分類されます。
完成済みの建売住宅
完成済みの物件について
完成済みの物件とは、既に建築工事が完了して建物が完成している状態の建売住宅のことをいいます。
特徴
建売住宅の完成日とは、建築確認検査機関による完了検査に合格して「検査済証」の発行日のことを指します。
検査済証が発行されて1年間は、「新築」として建売住宅を販売することができます。
1年を超過した場合は、「新築」として販売することはできず、「未入居住宅」となります。
注意点
完成済みの建売住宅は、全てが出来上がっている状態なので、買主として物件の良し悪しを判断しやすいといえます。
ただし、完成済みであるゆえ仕様変更などは一切できません。
建物が完成すると床下、壁内、屋根裏などは、隠れてしまいますので、住宅診断についての専門知識がなければ良し悪しを判断することは困難になります。
更地または建築中で未完成の建売住宅
更地または建築中の物件ついて
更地または建築中の未完成物件とは、建築工事前の更地または、既に建築工事が開始されているが未完成の段階で販売している状態のことをいいます。
特徴
更地または建築中であっても、建築確認検査機関で確認済証を取得している物件であれば、新築分譲住宅(建売住宅)として販売活動ができます。
建売住宅の完成日とは、建築確認検査機関による完了検査に合格して「検査済証」の発行日のことを指します。
従って、確認済証を取得してから検査済証が発行されるまでの期間は、未完成の建売住宅となります。
逆に、建築工事が完了していても検査済証を取得前であれば、未完成の建売住宅の扱いとなります。
注意点
未完成の「建売住宅」では、間取り、設備仕様、各部の色柄、価格に含まれる標準工事、オプション工事などを確認する必要があります。
それらを確認する際には、広告図面だけでなく、設計図面、仕様書、外観パース図などで確認しなければ、完成後に「契約時に聞いた話と違う」とトラブルになるケースも少なくありません。
更地(土地だけの状態)であっても、既に建築確認検査機関の確認済証を取得して「建売住宅」として販売されている物件では、間取り変更や仕様変更ができないことが多いので注意が必要です。
建築条件付き売地(イージーオーダー)
建築条件付きの売り地とは
建築条件付き売地とは、土地の売主が指定した建築会社で新築しなければならないという条件で、土地の売買契約を締結する形式となります。
特徴
新築分譲住宅(建売住宅)として宅建業者がユーザー向けに営業活動をするには、建築確認検査機関で確認済証を取得している必要がありますので、広告媒体には、『建築確認番号』を記載しなければなりません。
逆にいうと、建築確認を未取得の物件を新築分譲住宅(建売住宅)として広告することはできないということになります。
そのようなとき宅建業者は、「建築条件付き売地」として、営業活動します。
この場合、建築条件付き売地、土地価格2,000万円(建物参考プラン価格1,500万円)総額3,500万円というような広告で表示します。
建築確認を取得前の段階ですので、間取りの変更など自由度が高い物件も少なくありません。
このような建築条件付きの売地は、別名「イージーオーダー」の建売住宅と呼ばれることもあります。
注意点
土地を購入して注文住宅を建築したいが予算的に厳しい人には、建築条件付き売地の物件(建売住宅)が向いています。
ただし、建築会社を限定されているため「工法」や「設備仕様」を変更できないケースも少なくなくありません。
そのため「建物へのこだわりが強い人」や「予算に余裕がある人」は、建築条件ナシの売地を購入して注文住宅を建築することをお薦めします。
また、売主によっては、土地を仕入れて建築確認を取得するまでの期間だけ形式上「建築条件付きの売地」として販売するケースももあります。
この場合、間取りのプラン変更ができないことがあります。
「建築条件付き売地」や「イージーオーダー」は、あくまでも建売住宅の延長線上の物件だと認識した方が無難といえます。
価格に含まれる標準工事、オプション工事、建物仕様などは、予め十分に確認してから契約することが大切です。
出典:国土交通省 – 建築仕様までの手続き(pdf)
出典:公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会 – 広告表示の開始時期の制限
売主の種類と特徴
原則、建売住宅の売主は、宅建業者となります。
この売主を大別すると、下記の3つに分類できます。
1.パワービルダーとは?
パワービルダーとは、おおよそ年間1,000棟以上の建売住宅を広域で分譲する宅建業者を指す造語(和製英語)です。
さらに「大手パワービルダー」と「準大手パワービルダー」の2種類に大別できます。
1-1.大手パワービルダー
大手パワービルダーとは、飯田グループホールディングスのことを指します。
飯田グループホールディングスは、アーネストワン、一建設、飯田産業、タクトホーム、東栄住宅、アイディホームの6社で構成されています。
飯田グループの建売住宅
大手パワービルダー(飯田グループ各社)の年間分譲棟数
飯田グループ各社の年間分譲数(2021年3月期決算短信)のグラフ
会社名 | 年間棟数 |
---|---|
アーネストワン | 12,673棟 |
一建設 | 12,289棟 |
飯田産業 | 7,343棟 |
タクトホーム | 5,515棟 |
東栄住宅 | 4,594棟 |
アイディホーム | 4,195棟 |
合計 | 46,609棟 |
出典:飯田グループホールディングス株式会社-2021年3月期決算短信より(pdf)
特徴
飯田グループホールディングスは、年間4万棟以上というスケールメリットを生かして建材や設備などを対象仕入れすることで建築コストの大幅削減を実現しています。
また、建築にかかる工期も大幅に短縮することで経費削減をしています。
そのため、色指定や仕様変更など買主の希望を取り入れた分譲は不得意としています。
しかし、これにより、日本国内において最も低価格な建売住宅の供給を実現しています。
デザイン、建材や設備などの建物仕様、外構工事などは簡素な傾向といえます。
こんなユーザーに向いている
価格、立地を優先して、設備仕様や外構工事などは必要最低限そろっていれば問題ないというユーザーには最適です。
逆に、こだわりの間取りで建てたいという人には不向きです。
1-2.準大手パワービルダー
準大手パワービルダーとは、飯田グループホールディングスの年間棟数までは至らなくても、年間1000棟以上の建売住宅を分譲している宅建業者のことを指します。
準大手パワービルダーには、オープンハウスディベロップメント、ホークワン、ケイアイスター不動産、アイダ設計、三栄建築設計、ファースト住建などです。
準大手(ケイアイスター)の建売住宅
準大手パワービルダーの年間分譲棟数
準大手パワービルダー年間分譲数(2021年3月期決算短信)のグラフ
会社名 | 年間棟数 |
---|---|
オープンハウスディベロップメント | 5,449棟 |
ホークワン(オープンハウスグループ) | 2,247棟 |
ケイアイスター不動産 | 4,153棟 |
アイダ設計 | 3,302棟 |
三栄建築設計 | 1,696棟 |
ファースト住建 | 1,491棟 |
出典:オープンハウスグループ決算説明資料-2020年9月期(pdf)
出典:日経ビジネス電子版 SPECIAL-ケイアイスター不動産に関する記事
出典:三栄建築設計-業績ハイライト
特徴
年間分譲棟数を比較するとわかりますが、準大手パワービルダー全ての分譲棟数を合計しても、大手パワービルダーとされる飯田グループホールディングスの分譲棟数までとどきません。
このように分譲棟数だけで比較すると、大手と準大手との間には大きな開きがありますが、年間1000棟以上というスケールメリットを生かし建築コストの大幅削減を実現しています。
ただし、大手パワービルダーと全く同じ建物仕様では、価格競争で負けてしまうため、仕様やデザインを工夫して差別化を図っている傾向があります。
こんなユーザーに向いている
価格、立地などのは優先事項だけど、飯田グループホールディングスとは少し違うデザインや仕様を求めるのであれば、準大手パワービルダーが最適と言えます。
ただし、大手パワービルダーと同様に、こだわりの間取りで建てたいという人には不向きです。
大手パワービルダーと準大手パワービルダーの年間分譲棟数の比較表
飯田グループ全体と準大手パワービルダーの年間分譲棟数比較グラフ
【パワービルダー各社の特徴】飯田グループ・ケイアイスター・ホークワンなど10社を解説
2.注文住宅系ハウスメーカー
注文住宅系ハウスメーカーの分譲会社は、事業を主体は注文住宅の請負だが広域で分譲事業も行っている宅建業者のことを指します。
例えば、積水ハウス、セキスイハイム、タマホーム、ヤマダホームズなどです。
特徴
建売住宅といっても、建築条件付き売地の形式で分譲していることが多い傾向にあります。
事業主体が注文住宅なので、買主の希望を取り入れた分譲を得意としています。
建物仕様は、各ハウスメーカーのグレード(ローコスト系からハイエンド系まで)により異なります。
注文住宅系ハウスメーカーの分譲価格は、パワービルダーと比較すると相対的に高いといえます。
こんなユーザーに向いている
「ハウスメーカー注文住宅で建築したいけど土地がない」という消費者には最適です。
逆に、価格を優先する人には不向きです。
3.中小不動産業者・工務店
年間数棟から数百棟の建売住宅を分譲している宅建業者を指します。
地域で活動している不動産会社などが代表各です。
地元工務店が建築した建売住宅
特徴
自社で土地を仕入れて建築は外部に委託している業者や土地を仕入れて自社で建築している業者などさまざます。
地域に根差した地元の宅建業者が多いため、まち独自の条例や慣習などを熟知している傾向にあります。
そのため、狭小地、斜面、変形地、市街化調整区域など商品化するまで時間と手間がかかるような立地を得意とする会社もあります。
パワービルダーと注文住宅ハウスメーカー系の中間的な価格帯といえます。
こんなユーザーに向いている
引越し後の改装など計画している人や小回りの利いたアフターフォローを重視するのであれば地域に根差した宅建業者の建売住宅が最適です。
パワービルダーや注文住宅ハウスメーカー系の売主が分譲していないような立地で住まい探しをしている人にも向いています。
中小不動産業者や工務店の中には、さまざまな売主が存在しますので、業者の事業規模、施工会社、建物仕様などを予め確認する必要があります。
売主の事業規模を信頼の尺度として考える人には不向きです。
まとめ
注文ハウスメーカー系、中小不動産業者系、工務店系が売主の建売住宅では、意匠性(デザイン)を凝っていたり、建材、水回り設備、外構などをワンランク上にしてパワービルダーと差別化を図っている物件が多いのが特徴です。
一般的にパワービルダー系が売主の建売住宅は、価格設定が安い傾向になります。
注文ハウスメーカー系、中小不動産業者系、工務店系が売主の建売住宅は、パワービルダー系と比べると相対的に価格設定が高くなります。
建売住宅を検討するときには、施工会社(売主)の名称を確認して、その物件がどの種類の売主に該当するかを理解することにより、物件価格が建物仕様に見合っているかを判断し易くなります。