【物件選び】崖や擁壁の物件を購入するリスクと注意点!土砂災害警戒区域と土砂災害特別警戒区域の違い
【物件選び】崖や擁壁の物件を購入するリスクと注意点!土砂災害警戒区域と土砂災害特別警戒区域の違い
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FM76.7MHzフラワーラジオ にて毎週放送!
レギュラー番組:『不動産せんせい田中の教えて!不動産の知恵袋』
第496-3回目 (2024年4月04日放送分 その③)となります。
今回のテーマ『崖や擁壁の物件を購入するリスクと注意点』
次のテーマは
『崖や擁壁の物件を購入するリスクと注意点』
です。
擁壁の上の住宅(イメージ)
高低差が大きい立地の物件、特に今回は、崖や擁壁のお話をしていきます。
高低差が大きい立地?
今回も興味深いお話ですね。ぜひ、お願いします。
今回は、2名のリスナーさんから、擁壁に関連したご質問をいただいています。
それぞれのご質問にお答えする流れで進めて行きますね。
それでは、早速ですがフジコさん。
1つ目のご質問をご紹介お願いします。
承知しました。
ラジオネーム:ポロさん からのご質問です。
崖の上や崖の下のような立地の物件について
田中先生、フジコさん、こんにちは。
いつもYouTubeで視聴しています。
私は横浜市内で家を建てるために土地を探しています。
土地情報を検索して「安いな~」と思って現場を見に行くと、崖の上や崖の下のような立地の物件ばかりです。
このような物件を購入するときの注意点について教えてください。
よろしくお願いいたします。
ラジオネーム:ポロ さんからのご質問
ラジオネーム:ポロ さん。
ご質問ありがとう御座います。
高低差が大きなエリアの物件の注意点
高低差の多い地域(イメージ)
ポロさんのおっしゃる通り、横浜市内は高低差が大きく崖地のような物件が多いですよね。
そうですね。
崖地のような物件が多いですね。
私のような埼玉県民は、横浜と聞くと、ランドマークタワー周辺のキラキラしたイメージを思い浮かべてしまいます。
横浜ランドマークタワー周辺
ですが実際、は山を切り開いた勾配がきつい住宅地が多いです。
横浜の住宅地
そのため、現地を見に行ってみると、隣に自宅の2階にまで達する擁壁がそびえたっている。
建物まで迫った擁壁(イメージ)
なんてことも多いです。
そのような物件の注意すべき点についてお話します。
土砂災害ハザードマップを必ず確認
横浜市西区ハザードマップ
まず、高低差が大きなエリアの物件を検討するときには、土砂災害ハザードマップを必ず確認するようにしてください。
警戒区域に指定されたエリア
ハザードマップは、土砂災害の恐れがあるエリアが色分けされています。
この色分けについてから説明します。
- ・黄色の部分:土砂災害警戒区域
- ・赤色の部分:土砂災害特別警戒区域
特別警戒区域ということは、やっぱり危険なんですよね?
おっしゃる通り、危険(警戒が必要)なんです。
地方公共団体のホームページでは…
- ・土砂災害警戒区域→イエローゾーン
- ・土砂災害特別警戒区域→レッドゾーン
そうなんですね。
イエローゾーンとレッドゾーンの定義
- レッドゾーン
- 土砂災害が発生した場合、建築物の損壊が生じ住民の生命または身体に著しい危害が生ずる恐れがあると認められる区域と定義。
- イエローゾーン
- 土砂災害が発生した場合、住民の生命、または、身体に危害を生ずる恐れがあると認められた区域と定義。
土砂災害ハザードマップの、レッドゾーン/イエローゾーンは、高さ、斜度、土質などから計算され決定されます。
イエローゾーンとレッドゾーンは地形により決定される
- ・斜度30度以上、高さ5m以上の斜面の部分はレッドゾーン。
- ・その前後が斜面の下部では、斜面と同じ長さの範囲内もレッドゾーン。
- ・レッドゾーンの前後の区域はイエローゾーン。
なるほど。
地形で判断されて指定されているんですね。
土砂災害警戒区域でできること
- ・レッドゾーンでは、安全を確保するために必要な技術的基準に従っていると都道府県知事が判断した場合に限り、許可されることになります。
- ・レッドゾーンのエリア内で分譲事業をする場合は、適切に擁壁工事などを実施して、都道府県知事の許可を得る必要があります。
擁壁工事の様子
そうすることで、その開発エリアは土砂災害特別警戒区域の指定が解かれて、開発許可がおります。
警戒区域の指定が解かれたエリア
土砂災害特別警戒区域の指定が解かれないと、家が建てられないんですね。
■レッドゾーンでも建築できる場合がある
ですが、個人の住宅を建てる場合は、以下の条件を満たす場合に限りレッドゾーンでも建築できます。
- ・鉄筋コンクリートの建物
- ・1階部分を鉄筋コンクリートにして2階以上を木造で建てる
- ・鉄筋コンクリートの『待ち受け擁壁』を設けて木造住宅を守る
ただし、斜面の高さや規模、計画内容によっても条件は変わってきます。
また、擁壁工事の費用というのは、皆さんが想像しているよりも遥かに高額になります。
工事の規模により異なりますが、擁壁工事は数百万円から数千万になります。
えーっ!そんなにかかるのですね~!?
それは想定外の出費になってしまいますね。
安く土地を購入したつもりが、
「家を建てようと擁壁工事をしたら、土地代と同じくらいかかった」
というケースが結構ありますので注意が必要です。
土砂災害 3つのリスク
土砂災害警戒区域に指定される土地には、具体的に、どのような災害リスクがあるのですか?
土砂災害のリスクは大きく分けて3つあります。
土砂災害3つのリスク
- ・土石流
- ・地滑り
- ・急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)
土石流や地滑りは、山間部などの地方で発生することが多いので、もともと住宅の密集度合いが低くくなっています。
ですが、急傾斜地の崩壊(崖崩れ)は、住宅が密集している市街地でも時々起こり得る被害ですので、注意が必要です。
近年、温暖化が進行して大雨による災害が多発しています。
そのため、このような土砂災害による被害が増えていますので注意が必要です。
土砂災害に関連したニュース記事がありますので、フジコさんご紹介お願いします。
はい。
Yahoo!ニュース(共同通信社)の記事によると…
23年の土砂災害は1471件 前年比1.9倍、8人が死亡国土交通省は18日、崖崩れや土石流など、2023年に起きた土砂災害は43道府県の計1471件で、前年比1.9倍だったと発表した。死者は8人、けが人は19人で、住宅損壊が262戸だった。6~7月の梅雨前線による大雨で九州や中国地方を中心に被害が広がり、9月の台風13号では千葉県などで土砂災害が相次いだ。
内訳は崖崩れ1289件、土石流125件、地滑り57件。6~7月の大雨による土砂災害が397件と最も多く、台風2号、13号に伴う発生件数もそれぞれ300件を超えた。
都道府県別は、台風13号の被害が集中した千葉が275件で最多。次いで和歌山134件、佐賀90件だった。
ありがとうございます。
やはり、物件価格が安いからと言って、安易にレッドゾーンの物件を購入するというのは考え物だと思います。
そうですよね。
それでは、土砂災害特別警戒区域というのは、実際に見に行くと、どんな感じ何でしょうか?
この土砂災害ハザードマップで赤く指定されている部分をGoogleストリートビューで見てみますと、こんな感じです。
がけ際の住宅
手前の家の軒高を参考に計算すると、裏の崖との高低差は 約7mあります。
この崖のすぐ下には、このように家が建っています。
崖が崩れた時にはレッドゾーンの定義の通り、建築物の損壊が生じ住民の生命または身体に著しい危害が生ずる恐れがあることがわかると思います。
本当ですね。
擁壁のメンテナンスと共同所有に関して
それでは、フジコさん。
次の質問のご紹介をお願いします。
承知しました。
ラジオネーム:優柔不断 さん からのご質問です。
擁壁のメンテや所有権について教えてください
こんにちは。物件購入にあたって、動作参考にさせていただいております。
今回、質問があり、もし取り上げていただけたら嬉しいです。
私が求めていた好立地の建売情報が入りましたので見に行きました。
価格、広さ、陽当りなど満足なのですが、崖の下にある物件で、崖は、6~7mで擁壁があり崖上には何もありません。
擁壁と崖の上の土地の一部などは、擁壁の下の区画の所有者3件共有で所有権をもつ予定です。
この擁壁は、平成初期に築造されており、約30年経過しています。
今回の分譲計画では、この擁壁を新しくする予定はないとのことです。
これから20年くらいは問題ないと考えていますが、将来、いざ売ろうとしたときに擁壁のメンテや所有権の問題で価格が大幅に下がるのでは?と不安に感じています。
このような物件の注意点などを教えてください。
ラジオネーム:優柔不断 さん からのご質問
ラジオネーム:優柔不断 さん。
ご質問ありがとうございます。
ご質問の内容をまとめると
- ・擁壁の寿命はどれくらいか?
- ・擁壁の劣化によって物件の価格が大幅に下がるか?
- ・擁壁の所有権が共有名義だと後々な何か問題はないか?
■擁壁の寿命はどれくらいか?
まず、擁壁には様々な種類があり、
石積み擁壁
間知ブロック積擁壁
鉄筋コンクリート造擁壁
などがあります。いずれの擁壁も耐用年数は50年程度と言われています。
ただし、現存している石積み擁壁の多くは築造されてから50年以上経過したものが多いです。
近い将来、修繕に大きな費用がかかることが予測できます。
私だったら、高さ2mを超える石積み擁壁の物件は買いたくないですし、お勧めもしません。
お勧めされないのは、どうしてですか?
それは、高さ2mを超える古い石積み擁壁は、今後30年以内に発生すると予測されているマグニチュード7の首都直下型地震に対して、私自身が強度的に不安に感じるからです。
(2m以下であれば、多分大丈夫だと思いますが・・・。)
なるほど。
それでは、鉄筋コンクリートの擁壁の寿命はどうなのでしょうか?
鉄筋コンクリートの計画供用期間
日本建築学会で設定している鉄筋コンクリートの計画供用期間は
『標準供用級で65年、大規模修繕をして延命することにより供用限界期間は100年』
とされています。
結構もつのですね。
一般的に擁壁の寿命は50年と言われていますが、平成初期に築造されたRC擁壁であれば、計画共用期間いっぱいの65年程度まではもつと思います。
既に築造されて30年ということは、65年まであと35年ということです。
これを、不安に思うか、まだまだ先のことだから気にしないかは、捉え方次第ですね。
買う人の年齢によっても違いますよね。
そうですね。
私達の35年後は、85歳ですからね・・・。
擁壁よりも自分の耐用年数の方が心配です…。
全くです…。
■20年後に価格が大幅に下がるか?
「20年後に価格が大幅に下がるか?」という質問に移りますね。
難しい質問ですが、一つ言えるのは、擁壁は古くなるので、価格ではなく価値が下ります。
リセールするときの価値は下りますが、値段については20年後の物価と貨幣価値次第です。
今よりも、物件価格が下がっているか上がっているかは、予想することができません。
確かにそうですね。
あくまでも私個人的な見解ですが、20年後に日本は人口減少により住宅需要は下落して、住宅地の価値は今よりも下がっていると思います。
それ以上に貨幣価値が低下して、その分物価が上昇して、全てのモノの価格が、今では想像がつかないくらい値上りしていると考えています。希望的観測ですが・・・。
■擁壁の所有権が共有名義だと後々な何か問題はないか?
擁壁を共有名義で所有するということに関して、問題は無いのですか?
その擁壁は、他2区画の所有者と共有となるということですので、ご質問者様の単独で擁壁を修繕することはできません。
そうなんですね。
はい。共有者の皆さんで費用を出し合って修繕するということになります。
考え方としては、その擁壁については、私道持分と同じようなものです。
なるほど。共有物ですもんね。
私道に関する記事はこちらです↓
【不動産購入】『買ってはいけない私道』とは?
そのため、共有者の一人が経済的に破綻したり、何らかの事情で管理を放棄された場合は、残された人たちが費用負担して擁壁を修繕しなければならないというリスクがあります。
今まで3件で共有していた場合、1件が破綻してしまったら、自分ともう1件で修繕していかなくてはならないわけですね。
まとめ
土砂災害警戒区域内の物件は、崖崩れのリスクありますが、イエローゾーンでは、新築は建築できますし、レッドゾーンであっても、一定の安全基準を満たせば建築できてしまいます。
ただし、擁壁や建物が安全基準を満たして新築されても、構造物には耐用年数がありますので未来永劫安全であるということではありません。
以前お話しましたが、日本の木造住宅の平均寿命は64年、鉄筋コンクリートの計画共用期間は65年です。
従って、建物も擁壁も65年くらいが寿命の目安と言えます。
自分が生きている間、住めれば良いという考えであれば、恐らく十分住むことができると思います。
しかし、子供に住宅を資産として残してあげたいというのであれば、擁壁物件は将来の価値に対して不安定要素が多いので、平坦な立地を選んだ方が良いと考えます。
今回の標語
それでは、いつものように 五・七・五 の標語にまとめてみます。
お願いします。
まったなし
古い擁壁
崖崩れ
これから温暖化による自然災害が増加すると言われています。
さらに高度経済成長期に築造された擁壁の老朽化も崖崩れの原因にもなります。
そのため、これから住宅の購入を検討する人は、その点も気を付けてください。
なるほど。
田中先生。ありがとう御座いました。
不動産せんせい田中の【教えて不動産の知恵袋】
次回もお楽しみに!
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