【不動産市場】家も子どもも高所得者の特権?住宅ローンと教育費から考える子育て世帯の家計

マイホームと子育ては、本当に高所得者だけのものになりつつあるのでしょうか。子どものいる世帯の平均所得は857万円を超えていますが、その6割以上が現在の生活を「苦しい」と感じています。住宅価格と教育費が上昇するなか、家と子育てを両立するための家計について考えます。

家も子どもも高所得者の特権に?子育て世帯を襲う住宅ローンと教育費

この記事のポイント

住宅購入と子育ては密接に関係しています。一方で、住宅価格や教育費、生活費が上昇するなか、子育て世帯の家計負担は重くなっています。

この記事では、子どものいる世帯の所得、実際に住宅を購入している世帯の年収、子ども一人にかかる教育費・子育て費を比較し、マイホームと子育てを両立するための一つの家計モデルを考えます。

結論として、家と子どもが「高所得者だけの特権」とまでは言い切れません。ただし、住宅ローン、教育費、老後資金、不測の支出まで余裕を持って備えるには、相応の世帯収入と借入額のコントロールが重要です。

※記事はYouTube動画収録用の原稿をもとに要約しています。
そのため、公開後のYouTube動画と内容が異なる部分がございます。


子育ては住宅購入の大きなきっかけ

結婚や出産とマイホーム購入の関係

子どもが生まれたり、成長したりすることは、住宅購入を考える大きなきっかけの一つです。一方で、子育て費用が増える時期と住宅ローンを抱える時期が重なるため、住宅購入と教育費を別々に考えることはできません。

20代・30代では「結婚・出産」が住宅取得理由の上位

住宅金融支援機構の住宅ローン利用予定者調査では、住宅取得を計画している理由として、20代・30代では「結婚・出産」、40代では「子どもが大きくなってきた、増えた」が上位となっています。

原稿で使用している2026年調査では、20代の56.7%、30代の45.5%が「結婚・出産」を理由に挙げています。

出典住宅金融支援機構「住宅ローン利用予定者調査(2026年1月調査)」

広い家が必要になる一方で子育て費用も増える

子どもが生まれると、部屋数や収納、生活環境などを考えて、より広い住宅を求める家庭が増えます。

しかし同時に、食費、衣類、保育、教育、習い事などの支出も増えていきます。出産や育児によって共働き世帯の収入が一時的に減少する可能性もあります。

住宅価格の上昇によって共働き収入を前提とした住宅ローンを組む場合は、出産・育児による収入減少まで想定した資金計画が重要です。


  • ・結婚、出産、子どもの成長は住宅取得の大きなきっかけ
  • ・住宅ローンを抱える時期と子育て費用が増える時期は重なりやすい
  • ・共働き前提の借入では、出産や育児による一時的な収入減少も考慮する

子どものいる世帯は減少、平均所得857万円でも6割が苦しい

子どものいる世帯数と平均所得の変化

2025年の児童のいる世帯は917万4,000世帯で、全世帯の16.7%です。さらに、児童のいる世帯の平均所得は857万3,000円ですが、61.5%が現在の生活を「苦しい」と回答しています。

子どものいる世帯は約40年間で大幅に減少

厚生労働省の2025年国民生活基礎調査によると、児童のいる世帯は917万4,000世帯で、全世帯の16.7%となっています。

1986年には1,736万4,000世帯、全世帯の46.2%を占めていました。現在は、子どものいる世帯が全体の約6世帯に1世帯まで減少しています。

一方、夫婦のみの世帯は1,362万6,000世帯で、全世帯の24.7%となっています。

出典厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」

児童のいる世帯の平均所得は857万3,000円

同調査によると、2024年の1世帯当たり平均所得は、全世帯が575万2,000円、高齢者世帯以外の世帯が700万7,000円、児童のいる世帯が857万3,000円です。

子どものいる世帯は、全世帯平均よりも所得水準が高くなっています。

それでも61.5%が生活を「苦しい」と回答

児童のいる世帯の61.5%は、現在の暮らしについて「大変苦しい」または「やや苦しい」と回答しています。

平均所得が857万円あるから家計に余裕があるとは限りません。家族の人数が多く、食費や教育費などの支出も増えるためです。

理想の子ども数を持たない最大の理由は経済面

国立社会保障・人口問題研究所の第16回出生動向基本調査では、予定している子どもの数が理想の子どもの数を下回る夫婦のうち、52.6%が「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」と回答しています。

単純に子どもを望まない人が増えたというだけではなく、「子どもは欲しいが、経済的に責任を持って育てられるか不安」という問題も存在していると考えられます。

出典国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」


  • ・児童のいる世帯は2025年時点で全世帯の16.7%
  • ・平均所得は857万3,000円だが、61.5%が生活を「苦しい」と回答
  • ・理想の子ども数を持たない理由では、子育て・教育費の負担が最多

実際に家を買っている世帯の年収はいくらか

フラット35利用者と子育て世帯の平均年収比較

2025年度のフラット35利用者の平均世帯年収は716万円です。児童のいる世帯の雇用者所得750万7,000円と比較すると、調査条件は異なるものの、両者の収入水準に極端な差があるわけではありません。

フラット35利用者の平均世帯年収は716万円

住宅金融支援機構がまとめた2025年度のフラット35利用者35,553件では、平均世帯年収は716万円でした。

住宅種別平均世帯年収

出典住宅金融支援機構「2025年度 フラット35利用者調査結果」

児童のいる世帯の雇用者所得は750万7,000円

厚生労働省が公表している児童のいる世帯の857万3,000円は、給与だけではなく、事業所得や児童手当などを含む「総所得」です。

給与や賞与に近い「雇用者所得」に限ると、児童のいる世帯の平均は750万7,000円です。

フラット35利用者の平均世帯年収716万円との差は約35万円です。ただし、両調査は対象者や所得の定義が異なるため、単純に同じ母集団として比較できる数字ではありません。

「高所得者しか家と子どもを持てない」とまでは言い切れない

平均値だけを見ると、実際に住宅を購入している世帯と子どものいる世帯の収入水準には、大きな開きは見られません。

そのため、家と子どもを持つこと自体が、高所得者だけの特権になっているとまでは言い切れません。

一方で、住宅ローンを返済しながら、教育費、老後資金、不測の事態まで余裕を持って備えられる「選択の自由」は、高所得世帯ほど持ちやすくなっていると考えられます。


  • ・フラット35利用者の平均世帯年収は716万円
  • ・建売住宅は680万円、中古戸建は580万円
  • ・児童のいる世帯の雇用者所得は750万7,000円
  • ・家と子どもを持つことよりも「余裕を持って両立できるか」が問題になる

子ども一人2,000万円は本当なのか

子ども一人にかかる教育費と子育て費用

「子ども一人2,000万円」という数字は、単なる大げさな表現とは言えません。公的調査では、0歳から高校3年生までの子育て費用だけでも、預貯金・保険を除いて約2,173万円という結果が出ています。

幼稚園から高校まで全て公立でも約614万円

文部科学省の令和5年度「子供の学習費調査」では、幼稚園3歳から高校3年生までの15年間を全て公立に通った場合、学習費総額は約614万円です。

全て私立の場合は約1,969万円となり、公立と私立では大きな差があります。

子供の学習費調査

この学習費には、学校へ直接支払う費用だけでなく、塾や家庭学習、習い事などの学校外活動費も含まれます。

一方で、日常の衣食住、スマートフォン、レジャー、大学や専門学校の費用などは含まれていません。そのため、約614万円を「子ども一人を育てる総額」と考えることはできません。

出典文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」

0歳から高校3年生までで約2,173万円

国立成育医療研究センターが公表した2024年の調査では、第一子の0歳から高校3年生までの18年間にかかる子育て費用は、預貯金・保険を除いて2,172万7,154円でした。

預貯金・保険を含めた場合は2,570万1,956円です。

この調査には、衣類、食費、生活用品、保育費、学校教育費、学校外教育費、通信費、レジャー・旅行費など幅広い支出が含まれています。

さらに大学進学費用は別途必要です。そのため、「子ども一人に2,000万円」という金額は、進学先や生活スタイルによって大きく変わるものの、一つの現実的な目安と考えることができます。

出典国立成育医療研究センター「0歳~高校3年生の子育てにかかる年間費用の調査結果」

2,000万円を先に用意する必要があるわけではない

2,000万円以上の子育て費用が必要だからといって、子どもを持つ時点で2,000万円を用意しておかなければならないわけではありません。

住宅購入も子育ても、単純な損得だけで判断するものではありません。重要なのは、どのような暮らしや教育を希望し、そのために毎月いくら備える必要があるのかを考えることです。


  • ・幼稚園から高校まで全て公立でも学習費は約614万円
  • ・全て私立の場合は約1,969万円
  • ・0歳~高校3年生の子育て費用は預貯金・保険を除いて約2,173万円
  • ・大学進学費用は別途考える必要がある

マイホームと子育てを両立するボーダーライン

マイホームと子育てを両立する世帯年収と住宅ローンの目安

夫婦と子ども1人が、住宅ローンを返済しながら教育費と老後資金にも備える場合、原稿では世帯年収850万~900万円前後、住宅ローン2,500万~2,800万円以内を、一つの「安心ライン」として試算しています。

一つの安心ラインとして考えた条件

安心ラインとして考えた条件

これは「この年収がなければ家や子どもを持てない」という基準ではありません。住む地域、住宅価格、子どもの人数、進学先、共働きの状況、親からの援助などによって必要額は大きく変わります。

あくまで、住宅費だけで家計を使い切らず、教育費や老後資金まで並行して準備するための試算です。

住宅ローンは「借りられる額」より「返せる額」

世帯年収が高ければ、金融機関の審査上はより多く借りられる可能性があります。しかし、住宅ローンを増やすほど、教育費や老後資金へ回せる金額は減ります。

特に子どもが小さい時点では家計に余裕があっても、高校や大学への進学時期には教育費が大きく増える可能性があります。

住宅購入時点の家計だけではなく、子どもが高校生・大学生になった時点でも返済を続けられるかを確認することが重要です。


  • ・世帯年収850万~900万円は「必要条件」ではなく一つの安心ライン
  • ・住宅ローンは2,500万~2,800万円程度に抑える試算
  • ・住宅購入後も生活防衛資金を残す
  • ・高校、大学の教育費が増える時期まで見据えて判断する

世帯年収900万円の家計モデルを考える

世帯年収900万円で住宅ローンと子育て費用を両立する家計モデル

世帯年収900万円でも、住宅ローンを大きく借りすぎれば余裕はなくなります。家計を安定させるには、住宅費を抑え、教育費・老後資金・生活防衛資金へ継続的に振り分けることが重要です。

夫600万円+妻300万円のモデルケース

夫600万円+妻300万円のモデルケース

※手取り額は家族構成、社会保険料、税額、勤務先などによって異なります。あくまで原稿上のモデルケースです。

2026年8月のフラット35最頻金利は年3.29%

2026年8月のフラット35では、返済期間21年以上35年以下の最頻金利は年3.29%です。

年3.29%、35年、元利均等返済、ボーナス返済なしとして単純計算すると、2,800万円の借入で毎月返済額は約11万2,000円が目安になります。

これに固定資産税、火災保険、将来の修繕費などを加え、住宅関連費全体を月14万円程度として考えるモデルです。

出典住宅金融支援機構「フラット35 金利情報(2026年8月)」

家計には余白を残すことが重要

住宅関連費を支払ったあとにも、日常生活費、現在の子育て費、大学資金、老後資金、家電の買い替えや旅行などの特別費が必要です。

原稿では、生活費と現在の子育て費を月32万~34万円、教育・老後・特別費の積立を月12万円として試算しています。

ただし、月手取り59万円から住宅関連費14万円、生活費等32万~34万円、積立12万円を差し引くと、残額は約1万円~マイナス1万円となります。

そのため、実際に「余裕がある家計」にするには、住宅費、生活費、積立額のいずれかを調整し、毎月一定額の予備費を残せる計画にする必要があります。

高所得でも借りすぎれば余裕はなくなる

世帯年収850万~900万円は、多くの30代前半世帯にとって高い水準です。一方、30代前半で住宅を購入し、その後収入が増え、子どもが高校生になる頃にこの水準へ到達する家庭も考えられます。

重要なのは、現在の年収だけを見て判断することではありません。今後の収入変化、育児休業、教育費、住宅修繕費、老後資金まで含め、複数の条件で試算することです。

家と子どもが高所得者だけの特権だとは言い切れません。しかし、住宅、教育、老後のすべてについて自由に選択できる余裕は、所得や資産による差が表れやすい時代になっています。

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  • ・年収900万円でも住宅ローンを借りすぎれば家計の余裕はなくなる
  • ・2,800万円を年3.29%・35年で借りると返済額は月約11万2,000円が目安
  • ・教育費と老後資金を住宅ローンと同時に積み立てる
  • ・毎月の予備費まで残せるかを確認してから購入額を決める