飯田産業の新築の特徴と不具合事例
~ 住宅診断をする立場からみたIDS工法 ~
こんにちは。
赤外線建物診断技能師の野方実で御座います。
今回は飯田グループホールディングスの中の『飯田産業』について解説したいと思います。
飯田産業は『ハートフルタウン』という名称で分譲事業を行っており、日本全国に店舗を構え年間約6,000棟前後の住宅を供給しています。
建物は『IDS工法』と呼ばれる工法で建てられており、この工法のメリットについても解説いたします。
また、オリエンタル・ホーム、ビルトホームなどの子会社を持ち、同仕様の建物で分譲事業を行っています。
IDS工法で建てられています
IDS工法で建築中の様子
IDS工法は耐震等級が最高等級
飯田産業の建物は在来軸組工法とパネル工法を組み合わせた建物となっており、『IDS工法』と呼ばれています。
910mmピッチで建つ柱の間に、工場で製造された構造用合板(壁倍率5.0)に断熱材(ポリスチレンフォーム)が貼られたパネルを現場にて嵌め込む工法で、耐震性に優れ住宅性能評価にて耐震等級が最高等級の3を取得しています。
この耐震等級3とは建築基準法上で定められた強さよりも1.5倍以上の強さであることが定義されています。
耐震等級3なら地震保険が半額
耐震等級によって地震に強いという安心感もありますが、火災保険のオプションである地震保険が一般住宅の半額程度で加入することが可能となります。
耐震等級3なら地震保険が半額になる– 住宅性能表示制度を解説 –
パネル工法ならではのメリット
在来軸組工法とパネル工法を組み合わせたIDS工法は、下記のようなパネル工法のメリットも享受できます。
- ・建物上棟時にパネルを貼り付けていくので、サッシ取り付けまでの時間を短縮し、雨で室内を濡らすリスクを回避出来る。
- ・このパネル自体に断熱材が貼られているので、断熱材の充填ミスが少なくなる。
近年では同じグループ会社であるタクトホームも、このIDS工法を採用しています。
使われている断熱材
断熱材が貼られた様子
使われている断熱材ですが、飯田産業では床と壁はポリスチレンフォーム、二階の天井には一般的なグラスウールとなっています。
建築材料として使われる断熱材には大きく分けて2つあり、繊維系(グラスウール等)と発砲プラスチック系(ポリスチレンフォーム等)があります。
メリットとデメリット
一般的に建売住宅に使用されているのはグラスウールで、メリットは価格な手頃で耐燃焼性があることです。
デメリットは、現場で充填するので職人さんの技術によって、抜けなどの施工ミスが発生する可能性があることです。
飯田産業で使われているポリスチレンフォームとは、簡単に言うと発泡スチロールのような物なので・・・
- ・メリット :水や湿気に強く結露が起きにくい
- ・デメリット:熱に弱いので万が一、火災が起きた場合には熱で縮んでしまう可能性がある
グラスウールが充填されている建売住宅と、ポリスチレンフォームが充填されている飯田産業の建物とでは、実際に体感できるほどの違いはありません。
しかし、劣化性能についてはポリスチレンフォームの方が上と言えるでしょう。
TロックⅡ金物は一般金具の2倍の強度
特許取得のオリジナル金物を使用
地震の時や台風などの時に柱が土台や梁から抜けることを防ぐために使用するホールダウン金物を、オリジナルであるTロックⅡを使用しています。
TロックⅡは、一般的なホールダウン金具より2倍の強度を持ち、特許を取得しています。
このホールダウン金物ですが、一昔前までは3階建てのみ義務化されていました。
しかし、阪神大震災後の2000年から、木造2階建てにおいても『建設省告示1460号』で取り付けが義務付けられるようになりました。
出典:wikipedia – 建設省告示1460号
スケルトンインフィル構造
スケルトンインフィルの構造
建物外周部に地震に強いパネルを使用しているので、2階の間仕切壁を抜いても構造的に問題ない間取りになっていることが多いです。
マンションなどは将来的に二間を一間にリフォームすることが可能となり可変性のある建物となってます。
一方で、一般住宅では間仕切り壁の中に柱や筋交いが入っていることが多く、一間にするなどのリフォーム工事をするには構造的に難しくなる傾向があります。
床下は鋼製束を使わず横架材で支える
飯田産業の床下には鋼製束が使用されていません
鋼製束を使わない床下
鋼製束で支えられた床下
飯田産業の床下には床を支える鋼製束が使用されていません。
束の代わりに、基礎の立ち上がりと横架材で支える構造になっているので強度に問題はありませんが、床鳴りが発生した際は、補修に手間が掛かる可能性があります。
鋼製束がない床下の特徴~ 飯田産業の新築を住宅診断
内装・外装について
シンプルな内装
同じ飯田―グループ内で比べると飯田産業の建物はとてもシンプルな内外装といった印象です。
各設備の特徴
※画像は拡大します
外壁材
外壁材は14mmのサイディングで釘打ち施工となっています。
サイディングの厚みには14mmと16mmの商品がありますが、この14mmの釘打ち施工の場合には16mmの施工方法である金具留めに比べ若干ですが耐震強度が上がります。
耐久性についてはどちらも変わりませんので、10年から15年後には外壁塗装と板間のコーキングをする必要があります。
屋根材
屋根材にはアスファルトシングル(アスファルトをガラス繊維でコーティングし砂粒などの材を付着させた材料)を使用しています。
このアスファルトシングルは瓦などに比べてとても軽量なので、地震の揺れを軽減できるというメリットがあり、近年の新築住宅では良く使われている素材です。
デメリットとしては吹き付けられている表面の石粒が、引渡し後数か月は雨風によって落ちてくることですが、いずれ落ち着いてきますので特に心配はありません。
オプション扱いとなる設備
飯田産業は価格帯によって建物仕様が異なっており、低価格帯の物件では窓シャッターやクローゼット内のハンガーパイプ、浴室乾燥機がオプションとなっている事がありますので注意が必要です。
網戸、居室照明、カーテンレール、テレビアンテナなどもオプション扱いとなります。
オプション商品については飯田産業でも扱っていますが、ファーストライフ という提携会社でも扱っています。
余談となりますが、10年ほど前の仕様では、2階のトイレ本体がオプション扱いになっていた事もありました。
建売住宅のオプション工事
外構の特徴
シンプルな外構
外構についてもシンプルな施工となります。
ただし、物件によっては植栽が入る場合もあります。
最近では庭に人工芝が敷かれている物件が増えてきています。
これには、土のままよりも見た目が良い事と、雑草が生えにくいというメリットがあります。
飯田産業の建物保証は3種類
建物の保証には以下の3種類があります。
- ① 短期保証
-
床鳴りや壁紙の剥がれなど一般的な保証が短期の2年間となりますが、床下の白蟻の保証は5年となります。
- ② 長期保証
-
長期保証については法律で定められた構造体力上主要部分(柱や梁、基礎など)の欠陥と雨水の侵入について10年の保証となります。
この10年保証ですが、飯田産業では国土交通大臣指定の保険法人が提供する『新築住宅の保険』を利用していましたが、最近では東京法務局に保証金を供託しています。
万が一、飯田産業が10年保証期間中に倒産した場合には、この保証金から修補費用が買主に還付される仕組みとなっています。
- ③ 条件付き長期保証
-
条件付き長期保証については、5年ごとに飯田産業に点検をしもらい指摘箇所を有償にて工事することによって最長30年の保証を受けることが可能となっています。
この保証については任意となりますが、飯田産業以外の会社でメンテナンスを行った場合には保証は延長されませんので注意が必要です。
施工不良の事例
飯田産業に限らず大手分譲業者では1人の監督が数多くの建物を担当しているので、目が届かないことによって発生する施工ミスがあります。
また、職人さんの腕やモラルによって仕上がりの良し悪しが変わってきます。
ここでは飯田産業の建物でゼロシステムズが実際に発見した施工不良の事例をいくつかご紹介します。
※以下の施工不良ですが、飯田産業ではお引渡し前に全て快く是正して頂きました。
事例① 床の不陸
床の不陸不良
3階建て住宅の2階部分の一部の床が6/1000以上の傾きを発見しました。
是正内容→ 既存の床を剥がし下地の不陸調整を行い是正して頂きました。
原因 → 床下の梁が何らかの原因で盛り上がっており、そのまま合板と床を貼った事により不陸が発生したと思われます。
事例② 防火違反
防火違反-是正前
防火違反-是正後
法22条区域内(建物外周部を不燃材で覆わなければいけないエリア)で小屋裏の一部に不燃材が張られていませんでした。
是正内容→ 小屋裏外周に不燃材(石膏ボード)を張って是正して頂きました。
原因 → 職人さんや現場監督の認識不足によるものと思われます。
※この施工不良は、施工基準がマニュアル化されていない中小業者などでは、未だに多く発見されることがあります。
【欠陥住宅の実例】小屋裏や天井裏に隠れた欠陥『防火違反』
事例③ 断熱材の欠損
断熱材のカットミス
建築中の建物で、断熱材のポリスチレンフォームが間違えてカットされいました。
是正内容→ 熱損失の原因となるので新たに断熱材を充填して頂きました。
原因 → 金物かスイッチボックスの取付位置を間違ったことによることが原因かと思われます。
このような事例の他にも、完成後の建物にはキズや汚れ、隙間などを発見することがあります。
しかし、最近の飯田産業の建物では完成直後に品質チェックを行い、事前にキズなどの不具合箇所を是正している物件もあり、引渡し前の立会い時では、指摘箇所が以前よりも少なくなってきました。
まとめ
今回は飯田産業について解説させていただきました。
飯田産業の建物はシンプルな外観や内装なので、同じグループ会社である東栄住宅と建物が並んだ場合に、意匠性については多少劣るかなといった感じがします。
その反面、耐震性に優れたオリジナルのパネルを開発するなど、昔から飯田グループ内で一番『耐震』について拘ってきた会社でもあります。
また、近年では住宅性能評価で8項目に渡り最高等級を取得するなど住宅のスペックが分かりやすくなり、以前より安心感が増しました。
施工精度については、年々と社内チェック体制が厳しくなってきている様なので期待が持てます。
ただし、工場生産ではなく、大半が職人さんによる現場作業となる為に、仕上がりの程度も物件によって大きく異なってきます。
ご購入前にしっかりと見極めて判断することが大事です。
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